箸休め 何が何やらタペジャラ

亡霊葬稿ゴーストライターシュネヴィ』劇中でタニアが推測した通り、〈シュネヴィ〉が提灯ちょうちんから出す武器〈薔薇そうび〉は、古生物の骨をモチーフにしています。


 とは言え、本物を忠実に再現しているわけではなく、サイズや形状は〈シュネヴィ〉が使う上で実用的な仕様に変更されています。ステゴサウルスを模した〈カラカラブラン〉が風車の形をしているのも、以上の理由によるものです。無論、実物には強風を起こす力もありません。


 劇中では鎌のような爪〈ウラメシザース〉が、テリジノサウルスをかたどっていることを説明しました。

 では爪と共に装備される大バサミ〈ブランベルジュ〉は、一体どんな生物をモチーフにしているのでしょうか? タニアは翼竜の一種と予想しましたが、名前までは突き止められませんでした。


 ずばりその正体は、タペジャラ(またはタペヤラ)の頭骨です。


 タペジャラは翼竜目よくりゅうもくプテロダクティルス亜目あもくタペジャラに分類される翼竜で、白亜紀前期(1億2500万年前から1億1200万年前くらい)の南米に棲息していました。その名はブラジル先住民の言葉で、「お年寄り」や「古き存在」を意味します。


 彼等は有名なプテラノドンと同じく歯を持たず、獲物の魚を丸呑みしていたと言われています。反面、他の魚をる翼竜に比べてくちばしが短いことから、果物を食べていたのではないかと言う説もあります。


 空飛ぶ爬虫類と言うイメージからは想像も出来ませんが、タペジャラは恒温こうおん動物どうぶつだったと言います。しかも彼等の身体には、体毛が生えていたと考えられています。

 これはタペジャラに限った話ではなく、最近は翼竜と言う種全体が、体毛の生えた恒温こうおん動物どうぶつだったと見られているそうです。


 〈ブランベルジュ〉のモチーフになったのはタペジャラ・インペラトールと呼ばれる種類で、翼を開いた時の大きさは3㍍ほどだったと考えられています。参考までに言うと、翼を開いたハシブトガラスが1㍍程度です。


 グライダー似の体型に、極めて短い尻尾、身体に比して大きな頭などは、プテラノドンと大差ありません。

 しかしタペジャラ・インペラトールには一つ、プテラノドンと決定的に違う箇所があります。何を隠そう、ヨットのようなトサカです。


 彼等のトサカは膜状で、頭の先端から上に伸びた棒状の骨と、後頭部から突き出た棒状の骨との間に張られています。大きさは1㍍近くにもなり、頭骨よりも遥かに巨大です。ニワトリの頭にうちわが生えているようなものだと考えて頂ければ、多少判りやすいかも知れません。


 大きすぎるトサカが何の役に立っていたのかは、未だに判っていません。一説にはある種のセンサーで、風の流れを検知する働きがあったと言われています。

 また飛行の妨げになると言う意見がある一方で、方向転換に役立っていたと見る向きもあります。更には同族を見分けるための目印であったとも、繁殖期には異性へのアピールに使われていたとも言われています。卵から生まれる彼等の子供は、鳥のヒナとは違い、すぐに飛べたそうです。


 タペジャラが発見されたブラジルでは、他にも翼竜の化石が多く発見されています。中でも、ブラジル北東部セアラ州にあるアラリベ高原は、世界的な化石の産地として知られています。


 翼竜が多く見付かるのはサンタナ層と呼ばれる地層で、アンハングエラやトゥプクスアラなど大型の種が多数発見されています。またサンタナ層からは、シーラカンスの仲間に代表される魚類の化石もよく産出されるそうです。


 タペジャラ・インペラトールが発見されたのは、サンタナ層より少し古いクラト層と呼ばれる地層です。クラト層からは他にも70種を超える植物や、クモにサソリと言った節足せっそく動物どうぶつ、更には多くの昆虫の化石が掘り出されています。


 参考資料:大アマゾン展公式ガイドブック

              岩科司監修 TBSテレビ発行

      ニュートン別冊 よみがえる陸・海・空の王者たち

            恐竜・古生物 ILLUSTRATED

              発行人 髙森圭介 (株)ニュートンプレス発行

      地球ドラマチック「空の王者 翼竜」

              2016年2月13日放送 放送局:NHKEテレ

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