④Ride the Wind
「自首するつもりはありませんか?」
「殺す! いいや、
リーダーのギモンが息巻いたのを合図に、〈
敵意の放つ圧力は、まるで大蛇の締め付け。
だが現実に敵視の中央に立つシロは、たじろぐどころか微笑を浮かべていた。穏やかに目を細めた顔は、涼風でも浴びているかのようだ。
「みすみす痛い思いをする必要はない」
真顔で訴え、シロは首を左右に振る。瞬間、ギモンは額の青筋を膨張させ、高らかに鞭を振り上げた。小学生にしか見えないシロに降伏を勧められたのが、よほどトサカに来たらしい。
「泣き
ビシッ! と鋭い音に背中を打たれ、〈
五・七・五・七・七の電子音声が鳴り響き、〈
展開する人体から突風が吹き荒れ、バタン! と〈
ドリュドリュ……!
大きく裂けた口を吊り上げ、モグラたちは両手に生やしたオールをシロに向ける。身体より長い尾は機を
「……判りました。なるべく痛い思いをさせないように努力してみます」
やるせなさそうに溜息を吐くと、シロはポケットに左手を差し込み、鋭く引き抜く。
瞬間、
むやみやたらとキラキラする様子は、一〇〇均のハンガー以上に安っぽい。
「あれだけ上等こいて、引っ張り出したのがオモチャとはね!」
盛大に吹き出し、ギモンは鞭で地面を連打する。
下卑た爆笑はモグラへと波及し、銀色の体毛をわしゃわしゃと波打たせた。
「オモチャ……? いいえ、違います」
笑い転げる外野を
「これは〈
唐突にシロの動きが止まり、
以前は顔を歪めたシロだが、今日は眉一つ動かさない。
ゆっくり目を閉じたシロは、深く息を吸い、長々と白く染まった呼気を吐く。
先ほどバイクに砕かれ、ドラム缶の焚き火に飛び込んだ窓枠が火の手を上げる。十字状の木片が烈火を
砂漠の太陽にも溶かせなかったシロの手が、静かに滑りだす。
短剣のように握った
〝
盆踊りっぽいメロディが鳴り始め、
シロが首に引いた横線から桜色の光が
巨大な
ハッ! とシロはヘソの前から
チーン!
辛気臭い音が鳴り、
〝
二度目の
鬼火のような
推論を裏付けるように、走馬燈から続く光の
通常、〈
ポクポクポク……。
やにわに盆踊りが鳴り止み、入れ替わりに木魚が響きだす。クラブに付きものの音色に触発されたのか、シロは粛々と合掌を作った。
シロは一度、合掌を頭の上まで
あれは拳法の型か何かだろうか?
いや、どちらかと言えば、日曜朝八時にイケメンが取るポーズに似ている。
不可解かつ重厚な動作をタニアが見つめる中、シロは力こぶを出すように左腕を曲げる。すかさず両手を握り締めると、シロは右の拳を左の拳に引き寄せていった。
ぎち……ぎちぎち……。
血管の浮いた拳が鈍く
「……〈
〝
三度目の
〝
単調な木魚が停止し、竪琴に伴奏された
もぞ……もぞ……。
船舶信号にも似た点滅をきっかけにして、シロの足下が不可解に蠢く。
不均一に隆起していた砂が破裂した瞬間、地面から一組の腕が生えた。
肌の色は?
肉の付き方は?
男か? 女か?
タニアには何も答えられない。
シロを
もしや厳重な警備をかい潜り、
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