第28話 いざ、勝負!

「せーの、で一緒に言おうか」


 スマホの受話器に私が言います。


 いざ、勝負!




 主人と私の声が揃います。




「「 せーの、 〇〇〇円 」」




 ……くっそおおおおお。

 〇〇円、主人に届かず!

 負けたぜ!



 お互いの年収の話です。



 事の発端はコロナ。

 自営業をしている私。

 コロナ感染拡大のために、広告宣伝の効果が皆無(やっても意味が無い)になりまして、昨年度は広告宣伝費を大幅削減しました。


 そのため、今年は経費がいつもより半分になりました。


 ※ええ、仕入れ金を除くと大幅に経費を占めるのが広告宣伝費。あまりの高さにブクブク泡吹いて卒倒しそう。私、広告業界のために働いてるんじゃないの? と、自問することしばしば。でも、広告宣伝しないと来るものも来ませんしね……。


 その結果、当然ですが昨年度より所得がアップ。


 で、年末に青色申告、決算書を作成してるときに思ったんです。



 あれ、もしかして主人の年収と良いところまで近づいてるんじゃね?



 そう思ったとき、以前イベントでご一緒した先生(70代 女性 ズンバ、ヨガトレーナー、カイロプラクターの現役講師)のお言葉を思い出しました。



 *  *  *




「私たちはね、『夫の年収』を超えてこそ、成功したって言えるんですよ」


 おお……! 名言……!


 私は、その言葉に稲妻に打たれたようになりました。


「だから、それまでお互いに頑張りましょう」



 はい……! そうですね……!



 *  *  *



 まあ、出来るとしてもまだまだ当分先の話だわ、とその時は考えてたんですが、遠い話がにわかにいきなり近づいてきた感じ……?



 もしかして今回、主人の年収、超えてたら……?


 うわ、めっちゃやる気出る! 俄然、出る!

 仕事する気、満々!




 ワクワク、ドキドキしながら、主人に源泉徴収票が来たら教えて、と伝えました。


 さて。ここで、どこで比較して勝負するか考えるところなんですが。


 主人は会社員で、私は個人事業主なので。


 主人は、年金やら市民税やら天引き前の、源泉徴収票の額面上の所得。


 私の場合は、年商(年間の売上総額)から、家賃、仕入れ、水道光熱費、広告宣伝費、損害保険料などの必要経費を引いた額、といったところでしょうか。


 さあ、勝負!!





 ……だったんですが、結果、敗れたり。



 ううむ、そうは上手くいかないか。というか、全然まだまだだし。




「〇〇に年収負けたらさあ、俺、こんなに船に日夜生活束縛されてんのに、なんなの? てなるよ。仕事、やる気無くなっちゃうよ」



 主人が言います。

 うーん。それはそうだなあ。




 *  *  *



 主人は年々、基本給が上がりますし、ボーナスもありますので、厳しいところですが、私はやればやるほど、収入は変わるので巻き返しは不可能ではないはず。


『夫の年収を超える』


 色々、経営目標はありますけれども。

 ここまで、明確に数字に出て、なおかつやる気をかき立てる目標って他にあるでしょうか? 否、無い。



 今年も、コロナ禍で広告宣伝費は最小限に抑えていますので。


 よし、一円でも超せることを目指して、今年度も頑張るぜい!



 と、自分を鼓舞する私なのでした。














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