第27話 細い道

 車が一台しか通れない道がありますよね。

 山の中とか。

 対向車が来たら終わり、という。

 私の住んでいるところは田舎なので、そういう道がいっぱいあります。


 ときに私の車のナビ。

『彼』は少しクセがあるというか、おかしいというか、性格が悪いです。

「近場の温泉に行ってみよう!」とナビで検索すると、そんな道を当たり前のように一番に推奨してきて、おいおい本気ですか? と正気を疑いたくなります。

(しかし、面白そうなのでその道に果敢に挑戦する私と主人。そして車は泥で汚れ、まともな道を行くよりも到着に時間が倍かかったりして)


 日本全国にそのような道は星の数ほどあると思いますが。

 そのような道が増える『時期』というのもあり。

 それは冬ですね。特に雪国。


 今年は雪が多くて日本全国大変でしたね。


 雪が多く積もる地域では、道の両脇がもう『雪の壁』になってしまって、車が一台しか通れない細い道が増える状況になるのだと思います。


 さて、主人に聞いた話です。


 主人はよく北海道で下船いたします。

 港からタクシーで千歳空港まで行って帰宅するのがお決まりパターン。


 あるとき。

 少しへんぴな港で下船になりました。

 季節は冬。雪が積もってます。

 へんぴなところですから、先ほどお話したような道があちこちに出来ています。


 これ、対向車が来たら大変だな、という道を結構な距離で進んでいたとき。


 やはり来ました。

 対向車が。


 お互い停車して見合う二つの車。

 どうするのかな、と主人が思っていましたら。


 タクシーの運転手さんは。

 なんと新聞を取り出し。

 これ見よがしに広げ、読み始めました。


『いやぁ、これは譲れないですから』

『いや、足代は会社持ちですから、戻ってくれていいですよ』


 そういう主人に


『いえ、それは出来ない』


 と、きっぱり答える運転手さん。


(ちなみに停車していてもメーターは動きますけどね)


 断固として姿勢を変えない運転手さんに、主人も後部座席でスマホをぽちぽちしながらおとなしく待っていたそうなのですが。


 結局、譲って後退したのは、相手側の車。(結構な距離を後退してくれたそうです)

 しかし、動き始めるまでのその間。


 約三十分。


 飛行機の時間はかなりの余裕を持って主人は予約していたそうなのですが、空港に到着したのはギリギリだったとか。


 それにしても三十分ですよ。

 私なら、五分が限界。それ以上は待てない、折れちゃいますね。


 雪国の方は辛抱強い方が多いのかしら。









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