第24話 異世界へのとびら

 異世界転移、神隠し。


 それら不思議な出来事に、実は日常でよく遭遇していると私は思うのです。

 異世界への扉は身近に存在していて、開いたり閉じたりを頻繁に繰り返しているのだと思います。



 《その1 ノートが消えた》


 冬休み明け。

 今日は始業式という朝、息子がテンパってました。

「宿題の日記帳が見当たらない」と。

 家族総動員で大探し。


 昨日のウチに時間割しとけって言ったやろ!

 みんなで怒りつつ、隅から隅まで探します。

 それでも見つからない。

 集団登校の待ち合わせ時間がきて、息子は泣きながら家を出ました。


 始業式後、帰宅した息子は再び日記帳を探し始めました。


「あ、あった」


 ぽかん、とした声でそのノートを探し当てた長男。

 あった場所は茶箪笥の上。

 ペン立てやら、オモチャやら、お菓子の箱などがゴチャゴチャ置いてあるのですが。

 そこはなんと、息子も含めて家族全員が一度は探したところだったのです。

 なのに、何故見つからなかったのか。

 みんな、狐につままれたような顔。

 不思議です。


 これって、きっと神隠しの一例だと思うのです。



 《その2 かめきちが消えた》


 我が家にはイシガメが一匹います。

 名前はかめきち

 母が庭で歩いていたのを拾ってきて、水槽に土を入れて飼育しています。


 病気になるというので、時々、いい天気の時には日向ぼっこをさせています。

 二階のベランダに放します。

 逃げ場はありません。

 足元は四十センチほどの段で囲ってあるからです。かめ吉の体長は十センチ程度。

 段の壁は垂直ですし、かめ吉が二本足で立ったとしてもよじ登れず、壁を掻くだけです。


 それなのに消えました。


 忽然と姿を消したのです。探すようなところもないのですが、隅から隅まで探し回ったのです。

 それでも居ない。

 みんなでカラスか何かに咥えられて飛んで行っちゃったのだろう、と話し、私たちはかめ吉に別れを告げました。


 ところが。

 次の日の朝、かめ吉はベランダの真ん中に居ました!


 ただいま、とでも言わんばかりに家の中を向いてじっとしているではありませんか。

 びっくりです。

 一体、どこに居たの?!


 こういうのが二回、ありました。


 多分、彼は姿の見えない間「カメの国」に行ってたと思うのですよね。

 ちょっと里帰りして。再び戻ってきた。

 そんな感じだと思います。


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