第11話ホタル

 最近、風呂上がりに子供たちとホタル鑑賞に行ってます。

 ど田舎ですから、家の前の水田にヘイケボタルがちらほらいます。

 5分ほど歩いて、山に近い水田、湿地帯に行くと、もうゲンジボタルの飛んでるのが見えてきます。

 次男をバギーに乗せて。長男、ジャイ子に懐中電灯をもたせて。

 夜のお出かけは、ワクワクします。

 私が子供の時は近所の子供たちだけで、夜、ホタルを捕まえに出かけたものですが。時代は変わりましたしね。


 むっとくる、草いきれのにおい。

 なんだか甘いあのにおいをかぐと、ホタルの季節がやってきたなあ、といつも思うのです。


 ちらちら、すいー、ほわほわ。

 中学生の時に暗唱させられた、枕草子が浮かびます。


 夏は夜。……ただひとつ、ふたつ、ほかにうちひかりてゆくもおかし。(……でしたよね?)


 ゲンジボタルが高く飛ぶと、空の星かとみまごうほどです。


「すげー」


 長男が叫べば


「すげぇー」


 ジャイ子も真似して叫びます。

 捕まえて、ジャイ子の手の中に入れてやると


「お星さまみたいねぇ」


 と、にっこり。


(同じ虫なのにホタルを触っても、カナブンやテントウムシを触るよりもキレイに感じるのは何故でしょう?)


 森の木にとまっている光景は、ツリーみたい。幻想的です。ロマンチックです。

 この時期、いつも主人が乗船中なのは残念なことです。(柄にもないことを言う青瓢箪)


 メスはお腹の光が一本で、オスは二本。

 というのは昔から知っていましたが。

 関西と関東のホタルは点滅速度が異なる、という事を、この前長男の図鑑で初めて知りました。

 関西の方が点滅速度が速いのですって。

 ホタルもせっかち気質になるのでしょうか。


 ドヤ顔で主人に教えてあげましたら。

「そんなの知ってたよ」

 の一言。

 ええ? そんなに有名なことやったんですか?

 私は知らなかったぞ。


 ところで、北海道や沖縄にもホタルはいるのかしら。海を挟むと、点滅速度はどうなるのかしら。




 帰り道に長男が、この前私が話した都会と田舎の違いについてもう一度語ってきました。(最近、上級生で大阪に転校した子がいたのです)


「都会は、高いけど、病院とかお店とか近くにいっぱいあるやろ。欲しいものがあったらすぐ買えるやろ。田舎は、安いけど、何処に行くにも車がいるし、欲しいものを買いに行くのに時間がかかるやろ」

「せや。……でも、ホタルは都会におったらなかなか見られへんで。ホタルを見に行くのに、時間がかかるで」


 言いながら、何年か前に神戸の姉に頼まれてホタルを捕まえて箱に入れ、渡したことを思い出しました。

 教師をしている姉は、生徒に見せたかったのです。一度も見たことがなかった子が多く、大好評だったとか。


「ふーん……今、お母さんの感想(?)聞いて、☆☆思ったわ。田舎に来て良かったわ。ヨコハマやったら、家の前にホタル飛んでへんもんな」

「さよけ」


 答えながら。


 あんたも大きくなったら、どうせ都会へ出て行くんやろうけどな。


 と、寂しくなりました。

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