第2話
女の子を好きになるのは、ありなんだろうか。夜、部屋のベッドで寝転がりながらふとした疑問がよぎる。それを言ったらキスも。友達とふざけあってするお遊びじゃない、体温を感じる瞬間。あのキスは、恋なんだろうか。
そもそも何故トオノとキスしたのか。向こうが話しかけてきて、おしゃべりして、なんとなく距離が近くなって……した。突発的なものだった。「磁石のように惹かれ合って」なんて言うとロマンチック過ぎるけど、本当にあの時には、何か運命みたいなものが、流れていたんだと思う。わたしたち2人は出会うべくして出会い、繋がった。
でも、これを恋というには曖昧すぎるとわたしは思う。密会でしか会わない。キスするために会うような関係。それを恋と言ってしまっていいんだろうか。仰向けになって、彼女のことを考えた。……恋ではなくて、友達。歪な形で繋がっている友達なんだ。そう思う事にした。間違ってはいけないと第六感が言っている。恋じゃなくて友達。繰り返す。
次の日の放課後、ふらっと駅前のCDショップに立ち寄った。特に趣味でもなかったが、なんとなく入ってしまった。たぶん、トオノのせいだろう。滅多に入る事のない店内は、わたしにとって未知の空間だった。陳列された異国の顔と聞き慣れないPOPミュージック。これが彼女の好きな世界なのか、そう思いながらてくてくと歩き回る。
「なにかプレゼントを買っていこう」
想いが唐突によぎる。プレゼント、それは女の子ならよくやることだ。教室て
クラスの同級生がキーホルダーとかアクセサリーだとか渡し合っているのをよく見る。友達なら、普通だ。トオノはどんな音楽を聴くのだろう。吹奏楽をやっているのだから、やっぱりクラシックだろうか。いやそれは安直な気がする。不思議なトオノのことだ、きっと予想を裏切ってくるに違いない。となると、ますます分からない。わたしは頭を抱えた。そして、しばらく悩んだあげく、目に入って、なんとなく気になったCDを数枚選んでレジに持って行った。
偶然出会って、突然キスして、それが自然になって。それがわたしたちの関係なら、きっと運命を感じたもので大丈夫。いつの間にか、そんな根拠のない自信が芽生えていた。喜んでくれるかは、わからない。でも、このCDでわたしたちの距離はまた近づくに違いない。これから、お互いの知らないお互いを知って、それを繰り返して行くんだ。
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