第14話 討伐ギルド

破壊の少女の噂は、一部の人間にとって大きな盛り上がりを見せていた。

懸賞金10億の少女。

倒せば金がタンマリ、英雄とも呼ばれる。

探せ、一刻も早く見つけだし討ち取る。

俺が先だ! 俺ならSクラスが相手だろうと勝てる!!

そんな会話が、討伐斡旋を行うギルドでは日常の様に行われている。

実際にチームを組み動き出す面々もおり、一日が終わると活動内容を探り合う人々で酒場は賑わっていた。



モンスター討伐。

この世界においてポピュラーな収入源の一つだ。

魔界から魔物がやってきて以来、世界は奴らで溢れている。

その為、被害を受ける国や商会、果ては個人から依頼が出された。

斡旋は討伐ギルドの担当。

ギルドに登録さえしておけば、自分に合った仕事が手配される仕組みになっており、今やモンスター討伐は一つの生業として成立している。


しかし、討伐ギルドにも裏の一面がある。

モンスター討伐を謳ってはいるが、人間も例外ではないのだ。

懸賞金や恩賞が付けば、ギルドは掲示板に載せる。

要は金にさえなれば、人間もモンスターとして討つ。

それが、ギルドのやり方だった。


今回、エリスは人間として賞金首となった訳だが、

ギルドの掲示板に掲載されている理由が、そこにあった。



「あのー、仕事をお探しですか?」


お姉さんが、声をかけて来る。


「いえ、興味を引いたもので・・・」

「ふふふ、坊やにはちょっと早いかなその賞金首は。

 ん? ごめんなさい、お嬢さんだったかな?」

「いえ、お構いなく。 この人、悪い事したんですか?」

「そうね、10億の賞金首ですもの・・・」


深刻そうな表情を浮かべるお姉さん。

事情を知っている様だが、話すかどうか迷っている感じだ。


エリス、、、 何やったの???

最終兵器は困惑する。



魔物に情けをかけ、気分転換に立ち寄ったこの町。

人恋しさにブラブラと散歩を楽しんだのも束の間。

知り合いが10億の賞金首に・・・


最終兵器は激しく困惑していた。


訳が分からない。

思考を停止したまま、突っ立っているところに、お姉さんが声を掛けたのだ。



「あの・・ 馬鹿・・・」

「どうしたの?」

「いえ、こっちの話で・・・」

「お姉さん、、 思うんだけど、君にその賞金首は早いわ!

 別のを斡旋するから、ギルドに登録して」


お姉さんが丁寧に話しかけて来る。

どうやら、ギルドへの勧誘の様だが、、

エリスの馬鹿が気になってそれどころではない。


「いえ! コイツでお願いします」


出来るだけ真面目な顔で10億の手配書を指さす。


お姉さんは戸惑い、周りからは笑いが漏れた。

何かおかしい事を言ったのかと思い耽るとお姉さんが一言。


「死ぬ事になるわ」


先程までと違うエッジの効いた声音。

だが、それに最終兵器は無表情で返した。

一切の動揺を見せない眼光でお姉さんを見据える。


お姉さんとの一瞬の睨み合い。

そして、


「いいわ。 良い目をしてる。

 覚悟があるならチャンスをあげる」


その言葉に優しいさを感じない。

少し棘を含んだ対応。

それは最終兵器がお客様から仕事仲間になった瞬間だった。


「死ぬ覚悟があるなら、指定の時刻にそこに行きなさい。

 面接官が貴方を待っているわ。

 でも、ごめんなさい、当ギルドはこの件に関与しないの。

 生きてたら、また会いましょう」


お姉さんからメモを貰う。

と同時にお姉さんは目をそらし、相手をしてくれなくなった。


気付けば、周りは静まり返っていた。

先程、最終兵器を笑った者も黙り込み一瞥もくれてこない。

話しかけても同じだ。

まるで、誰からも見られていない様な雰囲気。

誰もが、最終兵器の存在を無視した。


・・・。


「私がいた事実を無かった事にしてるのかな?」


誰からも返事が来ない。


魔力の揺らぎもない為、記憶を消去や視界及び聴覚の遮断ではなさそうだし・・・

徹底している。 組織的な隠蔽。

ギルドからいなかった事にされていた。



とぼとぼとギルドを後にする。

メモを確認。

場所は・・・ 遠くなさそう。

時間は、もう少しある。


気分は最悪だけど、、 散歩でも再開しよう。

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