第6話 オークション1 会場前にて

???「お嬢さん、こっから先は通れません」

エリス「何だ貴様は?」



意気揚々と乗り込んだオークション会場入り口で、エリスは足止めを喰らう事となった。

目前には図体の大きさだけが取り柄と言えそうな男が、行く手を阻み、こちらに睨みをきかせている。

男が口を開くと、見た目通りの野太い声が響いた。



「お嬢さん! こっから先は有料です。 御下がり願えますか?」



オークションの参加費徴収。

高圧的な態度だが、理由はあったようだ。


でも、納得はできなかった。



「は? 参加するだけで金をとるだと? 貴様、ふざけているのか?」



不快感を語気に込めて男にぶつける。

しかし、男は反応せずエリスの挙動を窺っていた。


動いたのは別の男。

大きいだけの男は黙り、近くで控えていたもう一人が口をはさんだ。



「どこのお嬢様かは存じませんが、ええ、参加費を頂いております。

 それだけの価値が、今回のオークションにはありますので。

 費用は御一人様、10万マルクスからとなっております。


 お嬢様にはお高かったですかな?」



冷ややかな視線と共に告げられる参加条件。

だが、男は別にエリスを侮蔑している訳ではなかった。

提示された条件をそのまま客に伝える業務。その上で客の選別を行っている。

故に、仕方のない態度であった。


男が見る限り、目前のお嬢様は合格のラインに達している。

服装及び身なりは合格。

一人でいる点は怪しいが、お忍びで参加を望む、お転婆娘の可能性を考慮した。

男からすれば条件である10万マルクスさえ支払えば、ここを通す事に不満は無いのだ。



先程から、女の動きが止まっている。

どうやら、この娘に参加資格はない様だ。



「どうしました? お嬢様?

 得心がいきませんか?


 今回の品目は大変ハイグレードとなっています。

 その為、参加される方もハイグレードとなっております。

 私達と致しましても、お客様を選ぶ苦渋の決断をしているのです。


 お支払い頂けないのであれば、おひき・・・」



チャリン!

甲高い音がそこに響く。

それは小銭が落ちた時に鳴る、この場にはそぐわぬ音。


「足らんか?」 チャリン!


声と共に音が響く。

声の主は勿論エリスだった。

男達に小銭を拾えと言わんばかりの態度である。



「まだ、足らんか?」 チリン! チリン! チャリン!


音の異質さに男達は視線を下げた。

すると、そこに落ちていたのは、、、 小銭ではなく金貨だった。



慌てて拾う男達。

その驚きは拾い上げてからも続く。


「こ、、これは、、 フィリム金貨!」

「なんだそれは?」

「今回の品目にも挙がっている! 1枚50万は下らん品だ」


確認の会話をはさみながらも必死で数枚の金貨を拾い上げる男達。

周りの目も気にせず、まだ落ちていないか確認する様は、人の浅ましさをエリスに再確認させた。


「通るぞ!」エリスはそう言い残し、会場へ乗り込む。


「VIPルームにお通ししろ!」後ろから響くその声を無視して、エリスは足を進めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る