第5話 ロストギア

ロストギア。

それは現在においても製法が謎とされている、言わばオーパーツの様な兵器や武装の総称。

魔法や魔生物が跋扈するこの世界においても尚、オーバースペックな存在。


その一つの所在が移り行くだけで、各国のパワーバランスが崩壊すると言われている。

だからこそ、各国が血眼になって欲しがる存在であり、一度発見されれば戦争の火種になりかねない物騒な代物とされていた。


と、大見得は切ったもののハズレも存在する。

その為か、稀にロストギアが市場に流れる事があった。


今回、オークションに出品される武装。

それがロストギアとは限らない。

だが『最強』の武装との触れ込みから、人々の興味を大いに引き付けていた。



そんな前知識が・・・

ポンコツドラゴンにある筈も無く・・・


しかし、オークションのチラシを手にしたエリスは大いに喜びと歓声を上げる。


理由は簡単!

『最強』の武装のフレーズである。

それはまさに最終兵器を差すに相応しき言葉であり、エリスは何故かその言葉を目にした途端、鼻が高い気分になった。


例えるなら、子供を褒められる親の気分。と、言った所だったのだが、エリスはそれを知らない。

ただ、その高揚感に悪い気がしなかったので、今回は催しに参加する事にした。


エリスなら力づくでロストギアを奪える。

だが、そうしなかったのは単にそんな心境の変化があったからに他ならない。


それに最強の武装を競落すだけの財力をエリスは有している。

巣には今まで放置し続けた財宝がタンマリと存在し、それを全て捧げてもいいとエリスは真剣に考えている。

負ける要素が無い。

そんな慢心がエリスの心に芽生えていた。



最後に残ったパンの一欠片を口に放り込む。

実に美味しいパンだ。

新麦というのは本当なんだろう、実にいい気分である。


明日のオークション! 何着て行こうかな・・・

久しぶりの再会だ不格好は良くない。

それにドレスコードもあるだろうし、、、 新しい服を買わなきゃ!


突然、感じた幸せな気持ち。

エリスはそれに酔いしれていた。

エリスは知らないが、例えるなら子供の発表会を心待ちにする親の気持ちである。

もし映像メディアがあったならエリスは間違いなく持ち込んでいただろう。




・・・明日、

オークション会場が戦場になるとも知らず、エリスは久しく感じる幸せな気持ちを満喫するのであった。

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