一人称と三人称の使い分け

 私が小説を書く時に一番最初に悩むのが『一人称にするか三人称にするか』なんですよね。自作に三人称作品が多いのは、作中で別視点になる事があるからです。主人公以外の視点が物語に必要なら、基本的に私は三人称を選びますね。


 個人的な好みの話なのですけど、一人称作品で別視点になった時に主人公を変えて描写する表現、私は苦手です。読んでいて「あれ? この話の『私』は誰だっけ?」となってしまうからです。混乱しちゃうんですよ。

 自作の一人称作品で別視点が必要になったら、そのシーンの部分だけ三人称にしちゃいますね。


 と言った感じで、三人称作品の利点は様々な視点を違和感なく描写出来るところではないでしょうか。一人称は主人公以外の視点で描けませんからね。舞台裏では何が起こっていたのか、主人公が体験していない事を描く事が出来ないんです。

 実は三人称にはもうひとつ利点があります。それは心理描写の排除。徹底的にこだわれば、登場人物の誰一人心の動きを描かずに物語を動かす事も出来ます。そう言う書き方をする人はあまりいないと思いますけど、それが可能だと言うところがいいんですよね。


 私、ジブリ映画の『君たちはどう生きるか』を観たのですけど、登場人物全ての心理描写がないんですよあの映画。誰かが何か思っていても、大抵は細かな所作だけで表現するんですよね。口数の少ない作品なんです。だからちょっと難解と言うか。昨今の説明しすぎる作品に慣れていると不親切にも感じてしまう事でしょう。

 三人称作品なら、この映画のテクニックを真似る事も出来ます。心理描写禁止の縛りプレイ。私も表現力をもっと磨いて、いつか挑戦してみたいものです。


 では一人称作品はどうか。文字通りこの人称の一番の利点は心理描写です。主人公が心の中でベラベラ喋り続けるって作風の作品も少なくありません。実に一人称の利点を生かした作風ですよね。

 ただ、それが行き過ぎてしまって心の声と台詞だけで物語を書いてしてしまう人もいます。正直、そこまで行くと読むのが辛いです。


 一人称は主人公の心の動きが分かるので、主人公に共感しやすい作風とも言えるでしょう。ただし、視点を変えられないので、別視点の描写がある場合に表現が難しくなります。後、主人公視点なだけに他者の心理描写はタブーです。そこもテクニックが必要ですよね。


 個人的には三人称の作品の方が好きなんですよ。一人称の作品って、主人公の心理描写がくどい作品が多くてね。あんまり心理描写のボリュームがあると胸焼けしてしまうんです。サービスなのかも知れませんけど、あんまり心理描写が濃厚な作品は2割くらい削ってくれないかなあ……と思ってしまいます。

 そう言うキャラだから仕方ないだろって言われたら、返す言葉もないのですが。

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