ラノベは水物だから推敲していたら鮮度が落ちるってコト?

 今回はちょっと創作論っぽい事を書きますね。創作論って大抵は大体似たような内容になる事が多いんですけど、それは『いい作品を書く』と言う同じ目的のために書かれているのですから当然の話です。

 でも、創作論によって全く違う事が書かれている箇所もあるんです。簡単に言うと、昔と今とで方法論が決定的に違っている部分があるんですね。


 それが、タイトルに挙げた推敲の部分です。


 昔からの創作論では、書き上がってもすぐに発表したらあかんと言うのが一般的でした。今でもこの考え方が多数派だと思います。書き上がった直後は書き上がりハイになっているので文章を冷静に読み返す事が出来ないとか、誤字脱字、構成にミスがあっても気付きにくいと言われています。だから、文章の質を高めるために半年は寝かせるべし――これが従来の創作論での定番の指南でした。


 しかし、いつからでしょう。書き上がったら出来るだけ早く発表するんじゃ説が台頭してきたんです。私が最初に目にしたのは、自称プロ作家の人が書いた創作論でした。ただし、この人が一番最初に言い始めたのかどうかは分かりません。それ以前からこう言う主張はあったと考える方が自然でしょうね。


 推敲なんてして作品を寝かせるなんて機会損失でしかない。従来の考え方にどっぷり浸かっていた私には、この新しい流れに納得がいきませんでした。何故なら、推敲を重ねて文章を磨き上げたからいい作品になったと言う事例をいくつか見てきていたからです。

 なので、ふ~んと言う感じでこの説を聞き流していました。


 その後、作品は旬を過ぎたら売れない説を目にします。固定ファンの多い作品のノベライズで2巻が出なかったのは、1巻発売から時間が空きすぎたので出版側がストップを掛けちゃったと言うエピソードを目にしたんですな。発売したら売れたかも知れないのにねぇ、勿体ない。


 そうです。このエピソードで分かる通り、作品内容が流行に沿ったものだとしたら発表が遅くなればなるほど売れない事になります。勿論流行に左右されないのが一番ですけど、流行に乗っかる事で瞬間最大風速を得るスタイルの作品がある事も事実です。そう言う作品の代表がライトノベルではないでしょうか。

 何かが人気になればすぐに類似作がブワッと増殖するこの手のジャンルに於いて、スピードは命です。どれだけ質の高い面白い話が書けても、それがオワコンジャンルの話であったならヒットは難しくなる事でしょう。


 そんな水物ジャンルを作品を書く場合、旬を逃すのは文字通りの命取り。つまり、ジャンルによっては書いてすぐ発表がジャスティスとなる訳ですね。多少の文章の粗は気にしたら負けなのです。流行りものは流行りに乗ってこそなのですから。

 今、学生のラブコメでタピオカミルクティーを飲む描写をしても白けるばかりですもんね。そう言う事も含めて、作品が時代遅れにならないようにするのも大事です。


 流れの早い現代、あんまり作品を温めすぎるのは得策ではないのかも知れません。勿論これは書くジャンルによっても違ってくるのでしょう。作風のジャンルの旬が短そうなやつは早めに発表して、時代にそこまで左右されないものはじっくり推敲する。そう言う書き分けが大事になってくる気がします。

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