第17話 とある朝食(アリシア視点)
「今日も旨いな。さすが、『眠り小屋』の朝御飯だ」
「美味しいね」
今、宿の『眠り小屋』の食堂にて、目の前で幸せそうな表情をしている者達がいます。
それは、ご主人様とミル。他にも宿泊客らしき者達もちらほらいますが、ご主人様達ほど幸せの顔をした者達はいません。
ミルは大好きな魚の料理を食べられて大満足の様子。本当に幸せそうで、尻尾がゆったゆったと揺れ動いています。
こうして見ると、この幼女が先ほどまで私を追い詰めていたなんて信じられないですね。
戦闘に関しては天才的ですし。それに、素直にご主人様に甘えられるのも羨ましいです。どうやら、今日もご主人様のベッドに潜り混んでいたようです。全く、仕方ない子ですね。
今もご主人様に、「あーん」なんてしてもらってますし。なんて羨ま......微笑ましいのでしょうか。
そしてご主人様は、
「うまうま、アリシアも食べてみろよ」
何をアホなことをいっているのでしょうか?
この場にいるのだから食べるに決まっているじゃないですか。バカですか? 口には出さないですけどバカですか?
「なんか、アリシアの視線が寒いのだけど」
「クス、そんなことはないですけど」
どうやら、言葉しなくとも顔に出ていたようです。
「せっかく食べさせてやろうと思ったんだけどな。仕方ない、自分で食べるか」
「えっ?」
どうやら、私としたことがミスをおかしたみたいです。せっかくの「あーん」をして貰えないなんて......
まあ、いいです。
それにしても、ご主人様は何ともアホ面をさらしたお顔をしていて、思わず黒い笑みで嘆かせたくなります。
まあ、私は朝からそんな気分を悪くさせるようなことを言わない出来る子なので、言いません。どんなに弄りたくても言いません。ウズウズと体が疼きますが言いません。
......こんなことを考えていると余計にいじり倒したくなります。
だって、ご主人様は弄って欲しそうな顔をしていて、弄りがいがある顔もしてるという完璧な顔をしているのですもの。
そんな顔をしてるなんて、ずるいです。その内、肉体的にも手を出してしまいそうで怖いぐらいです。
これなら考えないといけませんね。調教用、おっと違いました。お仕置き用に何か技を考えないと。
そんなことを考えていると、ご主人様とミルが心配そうにこちらを見つめていました。
「おい、大丈夫か? 何やら思い詰めていそうだけど」
「アリシアちゃん大丈夫? もしかして、特訓やり過ぎたかな? ごめんね」
ふふ、心配させてしまいましたね。考えていた内容はとても口には出せませんが、申し訳ないことしました。
「いえ、大丈夫ですよ。ちょっと考え事をしていただけですから」
「よかったぁ、アリシアには無理をさせてないか心配だったんだよ」
「うん、よかったよ」
私は二人に精一杯の笑みを作り、微笑みます。こうして、心配してもらうのは悪くないですね。少しは心配をかけてみようかしら。
「さて朝御飯を食べたし、俺はちょっと依頼を受けて来るよ。アリシア達はついて来なくていいからな」
「「分かりました」」
ご主人様は立ち上がり、宿を後にします。最近はいつもこうです。ご主人様は力を付けるためにお一人で依頼を受けに行くのです。
少しは心配する身にもなって欲しいのですが......
まあ、言っても聞かないでしょう。私とミルは顔を見合わせ笑い合い、部屋の片付け等を開始します。いつご主人様が帰って来てもいいように。
ご主人様はまるで少し頼りない弄りがいがある兄のような方。ミルも同じように考えているかも知れませんね。
だからメイドとして迷惑でなければ家族として、ご主人様の未来を守って行きたいと思います。
あ、未来のご主人様の奥方になる方はきっちりと試験をしてやらなければいけませんね。フフフ。
これで楽しみが一つ出来ました。
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