第13話 知らない場所でベッドから目が覚めたら、言ってみたいことは? さん、はい。

「......ここはどこだ? 知らない天井だ」


 俺は気が着くと、見覚えがない部屋でベッドに横になっていた。

 そして、言ってみたい言葉ベスト3に入る「知らない天井だ」を言えて、大満足である。


 だけど本当に、見覚えがない場所だな。薬品の匂いみたいな匂いがするから医務室だと思われるんだけど。


 周りを見ながら、自分がいる場所を考えているとき、ふと気になり自分の体を見る。


 体は、嘘みたいに傷がなく痛くもない。実際に模擬戦なんて無かったみたいに。


 果たして、俺は傷を付けることは出来たのだろうか。


「はあ......結果は誰かが来るまで待つしかないか」


 俺は溜め息をつき、誰かを待つことにした。下手に外に出るよりは良いだろうと思うし。


「待っている間、暇だしステータスでも見るか」


 暇を潰すため、ステータスを開く。新たに手にいれたユニークスキルを確認するためだ。



『カミヤ・トオル』


種族: 人族(異世界人)


職業: 未定


Lv: 4


能力値: 攻 30

守 20

魔 15

魔防 15

速 50

運 3


魔法: 雷魔法2


スキル: 鑑定1


ユニークスキル: 『パーソナル・スペース』、『適応』』



 相変わらず、『鑑定』はレベルが1のままだが、レベルが上がり、更に『適応』の影響か能力値も一気に上がっている。


 スキルも『雷魔法』がレベルが1上がり、ユニークスキルで、『パーソナル・スペース』、『適応』を習得したようだ。


 まず、試合で使わなかったが『パーソナル・スペース』についてだ。

 これは、自分を中心に半径1,5メートル程の空間を支配する能力だ。

 そして実行する効果が簡単な程、力は大きくなるらしい。範囲が狭いが使いこなせれば、大きな戦力になってくれるだろう。


 つまり、この範囲以内に女性を入れて、ブラジャーだけ脱げって言うより、脱げ! と簡単な命令をした方が、強制力は大きいと言うことで大丈夫だ。だけど相手の力が強いほど、防ぐことは出来るらしい。......よし、使いこなせるようになるぞ!


 そしてもう一つ。『適応』だ。

このスキルは、名前の通り適応することが出来る能力らしい。らしいと言うのも説明が適応するとしか書いていなかったからだ。


 ここまで見たら、なにこれ? チート状態ですけど? みたいな感じになるが、このスキルは欠点がある。


 まず、使用出来るのは条件を満たした場合のみ。ちなみに条件は不明である。

これにより、いつも使える訳ではないみたいだ。


 このの欠点があるため、使い所が難しい。


 まあ、こんなもんか。

 ステータスを確認を終え、暇なので再び寝ようかなと思った時、部屋に入って来る者がいる。アリシアとミルだ。


「ご主人様、大丈夫ですか?! まだ、安静にしないと」


「トオルさまー!!」


 ミルは、起きている俺を見ると全力で抱き付いてくる。可愛いやつめ。


 アリシアは、ゆっくり近付いてきて気遣ってくれる。普段からこれぐらい優しくしてくれればいいのに。


「べ、別にご主人様が心配で介抱してるわけじゃないんだからね♪」


 なんだ? そのテンプレのようなツンデレは?

可愛いだろ。


「どうですか? グッと来ましたか?」


 どうやら、演技だったようだ。まあ、来るものがあったので、グッと来たと言っておこう。


「最高だ!」


「なら、よかったです」


 それからは三人で、試合を振り返っていた。まず、反省点。そしてスキルについてだ。


 反省点としては、無謀とも言える試合をしたことだろう。


「ご主人様はバカですか? アホですか? 芋虫以下のご主人様が戦えるわけないじゃないですか」


 この話では、アリシアが俺を罵りながら怒る。ミルも、可愛らしく「メッ!」なんて言いながら怒っている。


 心配して怒ってくれるから、こちらからしたら有難い。


そ して、ユニークスキルについてだ。このことを二人に話したら、驚かれた。


 なんでもユニークスキルだけは、誰でも身に付けれるらしいが、簡単に覚えられる物でなく個人によって能力は違うらしい。


 アリシアが言うには、俺が追い詰められ瀕死状態になったことから目覚めたのではないかと言う。


「でも、よかったです。トオルさまが無事で」


「心配してくれてありがとな。それで結果はどうだった? ジョンに傷を付けられたか?」


「それは」


「そこからは、俺が説明するぞ」


 試合の結果が気になり、二人に聞こうとした時だった。部屋にまた人が入ってくる。しっかりとした体つきの大柄な男。ジョンだった。


「結果は合格だ。ほら、見ろ。俺の頬に擦り傷が入っているだろ。とんだ化け物じゃないか」


「化け物は余計だが、合格か。よかった」


「トオルさま、よかったねー」


「ああ、頑張ったかいがあったな」


 結果は無事に合格。きちんと合格の証を見せるために、ジョンは頬の傷を残していたみたいだ。やっぱり、いいやつだな。


「さて、職業は明日決めようか。だから、今日一日はしっかり休め。分かったな」


「ああ、分かった」


 俺はここ最近の出来事を振り返る。

 色々、あった。異世界に来てからアリシアとミルに会いアリシアに罵られ、熊と激闘を観戦し、アリシアに罵られ、『ベルトラ』に入り、アリシアに罵られ、ギルド行き全裸のおっさんに出会い......あれ、アリシアに罵られ過ぎているような......


 そして初めて戦闘をした。きっとこれからもっと凄い冒険があるだろう。でも、二人のメイドがいれば乗り越えられる気がする。さて、強くならないとな。


 俺は気付いたら、笑っていた。自然と笑みが零れたと言ってもいいだろう。そして再び、目を閉じる。明日の明日の職業決めを夢見て。

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