第14話 ロリコン? それは愛する者を守る者さ

「やってまいりました、職業決めの時間です。今回は私、トオルと助手のメイド、アリシアとミルでお送りします」


「ひゅ、ひゅ~」


「なにやってるんですか? ご主人様、頭にうじがわきましたか? それとミル、口笛吹けてませんよ」


 そんなこんなで次の日。そう、待ちに待った職業決めの時間だ。俺達はギルドの登録を早々と済ませ、職業を決めるために、ギルドの受付の横にある水晶の前にいる。ほら、よく占いとかで使うようなあれだよ。


 ちなみに、ギルドカードなるものをちゃんと貰っている。

 いたって普通のカードで、名前がデカでかと書いてある。残念なことに名前しか書いてないのだ。小学生とかが付ける名札のカード版みたいな感じだろう。

 正直言えばいらないが、これがあると全ての国で身分証として使えるらしい。


 さて、そんなことはどうでもいいから職業を決めるとしよう。でもやり方なんて分からんし、受付嬢のユリスさんに聞くか。


「ユリスさん、職業決めってどうやるのですか?」


「えっ? 水晶に触れるだけですけど」


 はい、ものすごく簡単でした。聞いておいて恥ずかしい。アリシア達も何で教えてくれないんだよ。


 そんな非難するような視線を向けて見ると、彼女達は笑っていた。


 一人は、可愛らしく「仕方ないな~」とでも言っているかのようにニコニコと。何とも可愛らしい。


 もう一人は、「えっ? そんなことも分からないのですか? クスクス、バカですね。いくら知らないからと言っても触ってみるとかあるでしょうに」なんて言ってそうに、嘲笑うかのように笑っている。

 俺の体力は底についたかもしれない。


 すっかり、忘れていたよ。俺には天使と悪魔みたいな奴が仲間だったことを。


「と、とりあえず触るか」


「トオルさまぁ、はやくはやく」


「早くさわりなさい。この、ごみ虫が!!」


「......俺、何かした?」


 二人の急かすような行為に、しぶしぶ水晶に触れる。すると、立体映像のように水晶から文字が浮き出ているように見える。

 アリシア達も浮き出た文字が見えるから、誰でも見えるんだろうな。


 さて内容は、



自宅警備員ニート


『ロリコン』


『草刈り士』



 この三つだけでした。......はあ?

 ふざけてるの? 何これ? 戦うなってこと? まともな職業が全くないじゃないかよ。これはないぜ。


「ご主人様、何ですか? それ。面白すぎますって」


「おい、笑うな。俺も恥ずかしいから」


 アリシアは、上品に口を隠し笑っている。でも、目が語っているんだ。俺を馬鹿にしてると。

 分かるよ、その気持ち。でも、主なんだからそっとしといてほしかったな。


 俺は改めて周りの反応を見てみると、みんなして俺を見て笑っている。それはそうだろう。こんなふざけた職業は他にいないだろうし。


 受付嬢のユリスさんなんて、「すみません、すみません」なんて言いながら笑っているんだぞ。もう、なんかショックがでかいや。


 そんな中、我らがアイドル、ミルが俺によってきて上目遣いで聞いてくる。


「ねぇ、トオルさま。『ロリコン』ってなぁに?」


「えっ?」


 思わず、固まってしまった。前の似たようなことがあったような気がするが、その時より酷いだろう。周りのいた冒険者達、アリシアとユリスさん、みんなが凍りついたかのように固まっているのだから。


 ここで、知らないと答えられたらよかったのだが、ミルの上目遣いと猫耳のコンボをくらったら言わなきゃいけないだろう。このまま放置すると、涙目になって余計に最悪になる。


 誰もが期待するような目で俺を見る。この空気を変えてくれるはずだと。


 だが、俺はこんなことになるんじゃないかと懸念はしていたのだ。そして、対処方も考えてある。事前に答えを用意しとけば、怖くないのだ。グハハ。


「『ロリコン』って言うのはな......愛する者を守る者さ」


 決まった。周りの方々もよくやったとやじを飛ばしてくるぐらいだ。別に間違ったことは言ってないよね。


「ふ~ん、そうなんだ。なら、ミルも『ロリコン』になりたいな~」


「えっ?」


 再び固まる空気さすがにこれ以上は手がない。


 ミルはみんなが固まる中、行動を開始する。水晶に触れ、職業を変え始めたのだ。そして、選んだ職業は、


「ミルね、『スーパーロリメイド』に変えたよ。これでみんなを守れるね」


 いいのか、それで。誰もが思っただろう。だけどミルも喜んでいるし、変えなさいと言える者はいなかった。


 さて、気を取り直して俺の職業だ。

こんな最悪な職業でも実は強いかも知れないからな。


 俺は文字を触り、職業の特色が見れないか見てみる。すると、説明文が頭の中に入ってきたのだ。それは以下の通りだ。


 まず、『自宅警備員ニート』。


 家を守護する者。


 家の自分の部屋のみステータスがかなり上昇。


 部屋から離れるほど、ステータスが下がる。


 そして、知り合いに会うとスキル、『対人恐怖症』が一時的に身に付き、ステータスが底まで下がる。



 ......やべぇ、使えなさすぎる。まず、これはないな。冒険がしたいのに部屋から出られないとか終わってるな。俺はニートを卒業したいのだから。


 次は『ロリコン』。


 愛する者を守る者。

 守りたい心を持っているとステータスが上昇。好感度上昇。


 ただし、真の意味を知っていると内容は変わる。幼く愛でる者がいるとステータスが上昇。


 嫌われると状態異常『風邪』を引き、ステータスが下がる。


 幼い者が近くにいないと、強制的にステータスが下がる。



 こいつもやべぇ。真の意味って大抵のやつは知っているだろ。使えない職業だな。


 最後に『草刈り士』


 草を刈る者。


 鎌を装備時、ステータス上昇。派生職業有り。


 まともだった。流れで使えない職業だろうなと思ったが、まだ使える。これにするか。

 

俺は水晶を触り、『草刈り士』を選択する。すると、淡い光を放ちながら水晶が光り直ぐに消える。特に変化が無かったがこれでよかったのだろう。


「おわったぞ」


「終わりましたか」


「トオルさま、これからどうするの?」


 アリシアとミルに報告し、今後の方針を考える。今は、スキルのレベル上げとかをした方がいいだろう。戦闘に慣れるのも大事だ。なら、


「しばらく、この街を拠点にして活動する。とりあえず、宿を探すぞ」


「「はい」」


 俺は新たな目標を目指してギルドを出るのだった。





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