第9話 異世界の風呂事情が気になる今日この頃

 『ベルトラ』に着いてから特にこれといったトラブルも無く、中に入り、只今探索中である。今いる場所は街の市場的な場所だろうか。そこは騒がしく、活気に溢れていた。


 えっ? よくある金が無くて入れませんなんてことは無かったのかって?


 そんなのあるわけないだろ。こちらには最強チートメイドがいるんだぞ。ミルの『収納』から取り出したお金で、無事に入ることが出来たわけだ。


 ここで、この世界のお金のことを紹介しておこう。では、


「アリシア先生、お願いします」


「まったく、ご主人様は......仕方ないですね」


 アリシアに振ってみると、やはり『読心術』の域を超えたスキルで俺の考えを読んでいたようだ。

 そして、やれやれといった表情で説明を始める。


「まず、この世界の通貨は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨があります。これを使って物のやり取りやギルドの報酬の支払いを行うわけです」


「ほうほう、つまり......日本円で言うと?」


「日本と言う場所は知識としか知りませんが、銅貨から順番に、百円、千円、一万円、十万円と言ったところでしょうか」


「なるほど、分かりやすい説明ありがとう」


 この知識は絶対不可欠だっただろう。今知れて良かったな。旨い物を食べたいし。


 さて、静かにしているミルはというと、


「トオルさま、リンゴが売ってるよ。美味しそうだね」


「そうだな、きちんと稼げるようになったら、俺が買ってあげるからな」


 売られているリンゴを目をキラキラさせて眺めていた。やっぱり、お金をミル達は持っていると言ってもミルは子供だ。ここは俺が自分でお金をだして買いたいところだ。


「そろそろ、冒険者ギルドにつきますよ」


 市場を抜けると、そこには周りの建物より一回り大きい建物が立っていた。しかし、外観は周りの建物より古く感じる。所々に、蔦やひびがのような物まである。


 そして正面には大きめな扉が付いており、そこから視線を少し上に向けると、デカでかと『ギルド』と書かれた看板が、斜めに掛かっている。


「おいおい、何だか耐久性に不安がある建物だな」


「まるで、ご主人様みたいな汚さですね」


「トオルさまも、アリシアちゃんも失礼です。お二人の気持ちは分かるけどメッですよ」


 俺の顔はきっとひきつっているんだろな。アリシアですら苦笑を浮かべ、ミルも不安そうな顔をしている。


 そして、ミルや。アリシアの気持ちが分かるって、遠回しに俺が汚いってことか? なんか目から汗が。


 でも、不安なのは本当なんだよな。

 俺が住んでいた場所は地震大国なんて言われるほど地震が多かったんだ。その認識があるせいか、不安が話が拭えないでいる。


 だってこんな建物に住んでいて、もし風呂に入っているときに地震があってみろ。すっぽんぽんで外に出る自信ががあるぞ。


 そして周りから、

「なにあれ、ヤバくね?!」とか「キャー、変態よ」とか「ふむ、中々の肉体」とか「おまわりさん、コイツです!」なんて言われるんだぞ。


 誰得だよって感じだぞ。


「......ご主人様の頭の中は、本当に残念ですね」


「失礼な、これでも正常だわ」


 アリシアが溜め息をついて、呆れた様子で俺を見ている。

 ミルは『読心術』が使えないので、「ん?」って感じで頭を傾げている。うん、可愛い。


 しかしだ、これが女性ならどうだろうか?

風呂に入っている時に地震が起きる。耐久性に不安な建物なので、急いで外に出る。そして、外で待つ俺。


 完璧だな、これ。なら決まりだな。


「ボロい家の側に住むか」


 俺は決意を言葉にする。


「馬鹿ですか? 残念過ぎますよご主人様」


「よく分からないけど、止めとこ。トオルさま」


 二人からはなんか冷めた視線を感じる。ミルからも感じるって余程なのだろう。少し、反省しよう。


 しかし、入るのに覚悟がいるな。

冒険者ギルドって言ったら、入って絡まれるのが定番だろ。

 メイド二人なんか連れて入ったら、確実に絡まれるだろ。しかも、片方が幼女だから、俺は変な奴ってレッテルが貼られるような。


「ご主人様、いきますよ。通行人の迷惑になります」


「行こ、トオルさま。覚悟きめて」


「ちょっと待て。まだ、心の準備が」


 いつまでも入らないことに、イライラしたのか(イライラしたのはアリシアだけだが)メイド二人に無理矢理押される。そして、ギルドの扉を開ける。


 そして酒の匂いが立ち込める室内に入った瞬間目に入ったのは、


「マジで、すみませんでした!」


「は?」


 全裸で女性に土下座する髭面のおっさんだった。なんだこれ?


はあ、......帰っていいだろうか?

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