第2話 ちょっと待て。まだ心の準備が
「あの聞いてます?」
「......あ、はい聞いてます」
俺は目の前の物体を見て、考えることを放棄していたようだ。
しかし、知性がある物体か。もはや、俺の知る常識は通用しないのかも知れないな。......ヤバイなこいつは。
「物体とは女性に対して失礼ではないでしょうか?」
「はあ?」
目の前の物体は自分のことを女性と思い込んでいるようだ。どっからどうみても肉団子じゃないかよ。
「肉団子じゃありません!!! いい加減にしないと怒りますよ!」
「おい、人の考えを読むんじゃない! 人として最低だぞ」
「あ、貴方には言われたくありません!」
この肉団子は人の考えを読めるらしい。下手に変なことも考えられないのか。外見は肉団子で声は美少女って、マジで何なんだ? こいつは。
「で、肉団......テトリスさんは俺に何のようですか?」
「違います! 女神、トトリスです。もう!
」
いかにも怒ってますと言っているかのように、声はプンスカしている。声だけなら最高なんだけどな。よし、目を閉じよう。
「貴方を含め十五人の方には、特別に剣と魔法が飛び交う異世界に行く権利が与えられました」
俺を含めて十五人か。いつかは会ってみたいな。でも、どのように選んだのだろうか。
「ふーん、何で権利を与えられたんだ? 在り来たりなパターンとしてお前のミスで俺が死んだからか?」
「いえ、貴方はどうも病気により亡くなったみたいですね。まあ、あんな自堕落な生活をしていたら、体を悪くするのはとうぜんです。
ですので、私のせいで死んだわけではありません。
そして、この権利は亡くなった方々の中から抽選で選ばれた方を対象にしています。既に他の方々は特典を受け取り、異世界に向かわれました」
そうか、俺はやっぱり死んだのは間違いないか。
冷静に思い出してみると、俺は......どこかの病室で家族に看取られながら......いや、一人悲しく意識が無くなって死んだんだった。記憶が正しければ、二十才まで生きていたことになる。
まあ、いっか。これと言って、未練はないし。
そんなことより、大事なキーワードが出てきたな。そう、『特典』と言う存在だ。
異世界物の小説を読んだことがあるやつは、知っているチートってやつだな。
「で、その特典ってやつは何でもいいのか?」
「はい、ある程度の範囲までなら何でもいいです。ただ、与えられる特典は一つまでです」
一つまでか。さて、何にするか。
ここは王道に最強の身体能力とかか? はたまた、どんな力でも奪う強奪系の能力とかか?
悩むな~。でも、異世界と言ったらメイドかエルフってイメージ(片寄った)があるんだよな。メイドなんていいな。獣耳メイドなんて最高だと思うだけど......
まあ、冗談はこれぐらいにして強奪系の
「メイドさんでよろしいですね。では、逝ってらっしゃい!」
「ちょ、おま、ふざけるなよ。勝手に決めるうわわぁぁー」
俺は思考を読まれ、特典と言う名の『チート』を勝手に決められ、突如浮遊感を味わい、落下していく。
おい、さすがこれはまずいぞ。
しかもいってらっしゃいがヤバイ方向だったような。
ーsideトトリスー
不思議な方でした。選ばれた十五人の異世界人。皆それぞれ個性的方ばかりで、心の奥に強い意志がみられる。選ぶ特典も強力な物ばかり。
そんな中、最後に現れた彼は本当に訳の分からない方でした。会っていきなり肉団子呼ばわりする最低な方。しかし、不思議と暖かみがある人。だけど、心の奥底には......
いえ、今さら気にしても仕方ないですね。思わず、意地悪して勝手に特典を決めてしまいましたが、実は彼には謝罪の意味と二人を預ける意味を込めて もう一つ特典をプレゼントしてます。これで、他の方々にも遅れを取らないでしょう。
いつか再び会うその日まで 生き残って下さいと願うばかりです。
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