銀の髪留め
「ねぇねぇ、
数学の授業中彩が
「先生、先月も恋人を振ったんだって噂なんだ」
「先月も? 前に同じ事があったのかい?」
光輝は答えにくそうにすると、逆に彩に訊いた。
「Gメールで調べられないの?」
「うん……何か調べられないんだよなぁ。予想だけど、人の事を調べるには時間が掛かるんだと思う。先生といられたのは一瞬だしね」
つまり、長い間いる人ほど深く調べられるって訳……。
「でも何で気になったの?」
「いや、興味本意でさ」
「そんな興味だけで調べられては
話を聞いていた明海が二人の間に来てボソッと言う。そして彩の方を見て、頭を掻いた。
「暇なようですね。黒板の問題を三問、式も書いて解いて下さい」
面倒そうに返事をして、
『彼女を止めてあげて下さいね』
ゲームには参加するなと言うのが、明海の忠告だった。神の何を知ってるのか分からないが、子供だからと出るなと言われている。
「フゥ、どうかしたのかい?」
戻ってきた彩が光輝に訊くと、光輝は首を横に振った。
帰宅時
「ねぇ、本当に何もないのかい?」
「何もないよ」
明海が何かしたと思って彩がしつこく訊くが、光輝が首を横に振る。そんな時だった。前から歩いて来た女の子が、光輝にぶつかったのだ。大きな紙袋を両腕でしっかり抱えて落とさないようにした為、思い切り尻餅をついてしまった。
「ごめんなさい……」
「大丈夫だよ。立てる?」
光輝が訊くと、彼女は荷物を抱えたまま立とうとした。だが荷物が大きくて立てない。見かねた彩が手を貸して立たせた。
「あ、ありがとうございます……」
彼女は彩と大して背は変わらず、少し小さいくらい。蒼い長髪に銀の髪留めをしている。光輝達を上目遣いで見つめ、顔を逸らす。彩が笑みを見せて彼女に訊いた。
「随分重そうだけど、家は遠いのかい?」
「えと……少し遠いですけど、大丈夫です」
「大丈夫って言われてもなぁ」
先程の彼女の様子を思い出し、彩が頭を掻く。そして後ろで立つ光輝の方に振り返り、彼女を指差して言った。
「光輝くん、君がぶつかったんだ。荷物くらい持ってあげなさいよ」
「え? でも大丈夫って……」
「あのねぇ、光輝くん。大丈夫ですかって初見の人に言われて、大丈夫じゃないって言う人がいると思っているのかい?」
暫く困っていた光輝が一歩踏み出し、彼女の荷物に腕を伸ばした。
「さっきはごめんね。家まで持って行くよ」
「え、えと……いいんですか?」
光輝が頷く。彼女は少し迷った後、荷物を渡した。
「お願いします……」
三〇分ほど歩いた後、彼女が家だといった場所はなんと神社だった。彩と光輝で驚き、顔を見合わせる。彼女は玄関まで二人と行くと、光輝から荷物を受け取った。
「ありがとうございました……では」
彼女が背を向ける。だがその一瞬、光輝は彼女の悲しげな顔が目に入った。
「あ、あの!」
自分でも気付かない内に彼女を呼び止めていた。振り返った彼女に、光輝は少し戸惑ってから訊いた。
「俺……
何で名前を言ったのか。だが彼女はその言葉に答えるように言った。
「
彼女は微笑んでから扉を開け、家に入っていった。
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