Bの実力

 男は駅から暫く歩き、ネットカフェの個室を取った。脇にずっと挟んでいたノートパソコンを机の下に置いた。


「さて……じゃあやりますか」


 店のパソコンを起動し、インターネットを繋げる。そしてノートパソコンから一枚のデータチップを抜き取った。


「二時間……三時間で出来るかな」


 男はチップを入れ、そして裏のインターネットを開いて自分の拳を握った。暫くして自動的に開いたのは、全世界の警察のデータベース。


「全ての事には穴がある。俺はそれを、ぜぇんぶ知ってるぜ。まぁ、知ってるというか、教えて貰うんだけど」


 男が次に取り出したのはアイフォンだった。そしてメール画面を開き、パソコンの側に置いてから男はキーボードの上に指を持ってきた。


 ハッキング開始!


 男がキーボードに指を落とした瞬間、データベースにウイルスが流れ出す。そしてウイルスバスターのプログラムをもろともせず、全ての領域に侵入した。


 余裕だね


 警察の持つ全ての情報がハッキングを受け、男のチップへと流される。だが順調に行っていたその時、突然ロックが掛かった。逆探知のプログラムが作動する。


 ありゃりゃ、引っかかったか……。


 男は自身のノートパソコンを立ち上げ、店のと繋げる。そして机に置いておいたアイフォンを手にした。同時にメールが来て、アイフォンを揺らす。


 欠点発見! さすがは神のBugバグメール!


 男の操作で探知プログラムが解除された。その後も何度も相手のプログラムを解除し続け、遂に男は全てのデータをチップに送信した。チップを抜き、男は首を回して音を鳴らした。


「一時間で済んだか。まぁ当たり前かな」


 チップを自分のノートパソコンに差し込み、男は店を出た。


 その頃、イギリスにある会社のビル


「何? 新たなプログラムを?」


 座って窓の外を見ながら男が聞き直す。椅子を回転させ、部下の方に向き直った。


「国際警察を中心に、世界中の警察のデータがコピーされたようです。すぐに、更なる 防御用のプログラム作成の依頼が来てます」


 依頼を聞き、男は顎髭を触って溜め息をついた。


「わざわざ警察のデータベースをハッキングか……相変わらず破天荒な奴だ。かつてはFBIでも優秀なハッカーだったらしいが、今では面影もないな……ジャック・キャビラス」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る