他の参加者達
神に選ばれた参加者達。その中で三人、外国から日本に来ていた。
大阪
「おばさん、おかわりぃ!」
「はいはい、貴方はお好み焼きが好きねぇ」
山積みになった皿を見ておばさんが言う。頼んだ男は追加で持ってきて貰ったお好み焼きをも、すぐに空にしてみせた。
「フゥ……喰った喰った。まだ喰うけど」
男はアイフォンを取り出し、画面を操作する。そしてメール画面を開き、メールを見る。
『野菜不足』
「ビタミン不足かぁ……って訳でおばさん! 次は野菜多めで頼むねぇ!」
北海道
「……さぶっ。寒い、とにかく寒い。日本は今、春ではないのか」
軽装の男が体を擦りながらケータイを開き、メールを見る。
『日本は今春真っ盛り』
「春とは……暖かいものではないのか」
男は体を震わせながら、とりあえず歩き始めた。
沖縄
「あぁ! 間違えたぁ! 沖縄じゃなくて東京行きのチケット買った積りだったのにぃ!」
空港で一人の女が騒ぐ。頭を掻き
「うぅ! コンサート間に合わないよぉ!」
アイフォンを取り出してメールを見る。
『トイレにハンカチ忘れてる』
「うわぁっ! 早く戻らなきゃぁ!」
女は騒ぎながら、トイレの方に戻っていった。
彼らが光輝達と会うのは、果たしていつになるのか。
「やぁ、光輝くん! 遊びに来たよ!」
光輝の部屋の入り口で、彩が笑って言う。光輝は寝起きで、ボサボサの頭を掻きながら扉を開けた。
「メールくらいくれてもいいのに」
「いやぁ、驚かしたくてさ!」
大して驚かなかった事を光輝は黙った。そうでないと、絶対に何か言い返される。
「ってか、よく俺の家がわかったね」
「愚問だよ」
彩が持っていたケータイを振る。Gメールが情報収集のメールだと光輝は思い出し、納得した。
「入っていいかい?」
「え、あぁ……うん。いいけど――」
「じゃ、お邪魔ぁ!」
彩が遠慮なしで入る。彩はリビングまで進むと、高いテンションがまた高くなった。
「意外に部屋きれぇ!」
「意外にって……」
逆にテンションの下がった光輝に、彩は振り返った。
「いやいや、褒めてるんだよ。一人暮らしの男性の部屋って、足の踏み場がないイメージしかなかったからさ。すごい整理されてて驚いたのさ」
確かに綺麗にしてはいたが、まさかこんな奇妙な褒められ方をされるとは思っていなかった。光輝は喜んでいいのか、いけないのか分からなくなる。結局、笑って誤魔化した。
「うぅん。少し掃除する気でもいたんだけど、僕より女子力が高いとは……Gメールにはなかったのに」
Gメールを見る彩に、光輝はまた笑って誤魔化した。
「さて、光輝くん! 早速行こうじゃないか!」
「い、行くって……どこに?」
「決まってるだろ? 神様探しだよ」
さっさと着替えさせられた光輝は、彩と共に公園に来た。滅多に人は来ない為、汚い遊具が並んでいる。
「さてと……どこを探すか目処(めど)は立ってるの? 彩さん」
光輝が訊くと、彩はケータイを開いてメールを見た。
「とりあえず……僕はあの日の放送を生で見たけど、あの神様は多分、日本人だと思う」
「何で?」
「だって、バリバリ日本語で言ってたもの。もし外国人が
納得して聞いてると、光輝は自分のメールを見た。
『そのまま待機』
「待機?」
彩が顔を近づけてメールを覗く。光輝は思わずケータイを閉じた。
「どゆこと?」
「さ、さぁ」
光輝は正直、彩が顔を近づけてきた事に焦っていて冷静じゃない。今の光輝は、どんな質問も、率直に答えるのは無理だった。
「うぅん。このままここに居れば、君が得をする訳か」
「多分……もしかしたら――」
「君達、ちょっといいかな?」
青いスーツを着た男が声を掛け、こちらに歩いて来た。彩が前に出る。
「道なら、僕らここいら初めてだから答えられませんよ」
男が笑みを浮かべ、胸ポケットから黒い何かを取り出して開いた。
「ここら辺の道ならよく知ってるさ。警察が知らないのはおかしいだろ?」
男が開いた警察手帳に、警視庁の浮き出し印が出ていた。それが本物の印か二人には分からなかったが、男の雰囲気から嘘ではない気がしていた。
「今日は休暇を取ったんだが、君達の話を聞いてな。少し話してみたくなった」
「何を?」
彩が訊くと男は警察手帳をしまい、同じ胸ポケットからアイフォンを取り出した。
「君達は……どのアルファベットだ?」
その台詞に二人はやっと気付かされた。この男も――
「俺はP。Pの
警察とは思えない乱暴な口調。だが男が見せたメールは、送信者が非通知だった。おそらく本物。この男も参加者なのだ。
「神とか名乗ってるイカレ野郎のゲームなんて面倒だが、仕方ねぇ。さっさとこのゲームを終わらせる。だがその為には、多くの能力――メールが必要だ」
彩がニヤついて話す。
「なるほどね……バリバリ僕らを利用する気なのか。まぁいいよ、僕もこのゲームを終わらせたい。それで、神に頼みたい事があるんだ」
警察の男がニヤついた顔を返す。その笑みの中に、光輝は何かを感じた。はっきり何なのかは分からなかったが、得た感情は恐怖だった。
「いいぜ、終わればなんでもいい。
「警部!」
突然パトカーから降りた青年が卓を呼ぶ。卓は面倒そうに、眉間に皺を作った。
「警部、西のデパート裏で殺人です! テイラの仕業かと!」
「何! よし、連れてけ!」
部下であろう青年のパトカーに乗り、卓は行ってしまった。握手しようと手を伸ばしかけていた彩が、手を引く。
「非番なのに大変だね、警察官って。僕はやっぱ、君みたいに落ち着いてる人がいいや」
光輝の方を振り向いて言う。だが光輝は、苦笑いで誤魔化した。光輝はあの卓と、全く話していない。というか、話せなかった。それは落ち着いてるからじゃなく、ただ声が出なかったのだ。
彩の時もそうだったが、光輝は話しかけて貰わないと初対面の人と話せない。それが光輝最大のコンプレックスだ。そんなコンプレックスに気付かずに彩が落ち着いてると言ったので、光輝は返事に困ったのだ。
「でも、情報収集は出来たよ」
彩はケータイを開き、メールを光輝に見せる。そこには卓の情報がビッシリ書かれていた。
「じゃあ行こうか、光輝くん。あの警察の人はまだ、信用仕切れない」
「……分かった」
光輝は彩の後ろについて行った。
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