アルファベットメール

 ゲーム開始から三日後 東京都 とあるマンションの一室


「あれから三日経った……警察はまだ捕まえないのかな」


 一人暮らしの高校二年生、斉藤光輝さいとうこうき。新年最初に来たメールが、友達のではなく神からのゲーム参加の知らせだった。それから特番で殆どやらないニュースを見て、あの神が捕まる知らせを待っている。


 だが光輝は、神から送られたメールを見て思うことがあった。


 『三年以内に我を探し出せ』つまり奴は、三年間見つからない自身があるって事なんじゃないかな。見つからず、神と名乗った自分と言う人間ごと、人類を滅ぼそうとしてるんじゃないのかな。


 考えるだけ、光輝は不安に駆られる。ベッドに倒れて天井を眺め、耳でTVの状況を把握する。今はそれしか出来ない――というかしたくなかった。


「二六人……じゃあ、俺以外に……」


 後二五人選ばれている。その内一人でも見つけてくれれば、それでいい。神とかいう奴のゲームに付き合ってくれる人がいる事を祈ろう。


 そう考えていた光輝だったが、ケータイが震えてメールの受信を光輝に伝えてきた。無心で開く。


『寝つきが悪いなら、枕の高さを調節するといい。ちなみに君に合う高さは、一三.八センチだ』


 光輝はガッカリしてケータイを閉じた。ゲーム参加のメールが送られてから、度々送られてくるこのメール。これには光輝と、光輝の周囲の物をよりよくする為の方法が書かれている。


 こんなのでどう見つければいいんだよ、ったく……。


 神が言っていた分け与えた力。参加メールに書いてあったが、まさかこんなものだとは光輝は思わなかった。


 A~Zまで、二六のアルファベットの内一つを受け取り、そのアルファベットにあった力のメールが届く。そして光輝が受け取ったのはE。


 光輝は再びケータイを手に取ってメールを見る。神から送られたメールは最初のを除いて、全て能力向上の方法が書かれたメールだった。


「俺と、俺の周囲の能力向上方法記載のメール。Elevateエレベイトメール……Eメール、か」


 力だったら捜索ゲームなんだし、なんかこう、ものを見透かす目とかの方がよかったな……。


 しかし、幾らそう思ったところでそのような力は手に入らない。来るのはまた、神からのEメール。


『視力をあげるのなら、遠くの緑を見るのがよい』


「って! これ確実にどっかで見てるだろ! その千里眼頂戴よぉ!」


 手に入らないのはもう分かった。とにかく、こんな捜索とは無縁の能力メールを持った自分は参加しない方がいい。そう自分に言い聞かせ、光輝はベッドに再び倒れて昼間から布団を被った。


「全く……なんで俺が、俺がぁ……俺がぁ――」


 再びメールが届く。今日は――今日からこれの繰り返しになる事を光輝は覚悟しきれなかった。

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