6.回想


「はい、すっぽり岩と岩の間にです。

でもおかしいんですよ、毎年この山でクライミングの練習をしていまして。

何度も登った壁ですし。同じ岩のあたりを通ったのですが。

今までそんなものはありませんでした」


杉吹峠周辺の切り立った岩肌で女性の死体が発見された。

発見したのは入山中の登山客だった。

発見者はロッククライミングに長けており、

たまたま岩壁に白い布がひらめくのを見つけたので

興味本位で近づき死体を発見、通報にいたった。

地上20mほど、ごく小さな岩の窪みに押し込めるようであったという。


検視の結果、ミイラ化した死体は身元不明で、

年齢は20~30代、死後数十年が経過していたことが判明した。

髪を結い上げ白装束を纏い、布で目隠しがされていた。

長い絶食期間を経て山に登り、凍死したと見られている。

さらに凍りついた体にはいくつかの穴が開けらており、

まるで吹奏する楽器のようであったという。


--------------------



これでこの物語はおしまいです。


舞台に明かりがつきます。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

緞帳 -杉吹峠の怪異- 順番 @jyunban

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ