3.雪踏

雪の降る日は静かです。

雪が衝撃吸収剤クッションになって、音を吸い込むからです。

雪の前では、

あなたと、あなたの吐く息の、二人きりになるのです。


雪を、

ざくざくと踏んでも、じゃぐじゃぐと弄っても、

ざりざりと削っても、しょりしょりと拭っても、

まっしろいままなのです。


みんな雪なんか嫌いなのです。

もう見たくもない。

だからなのです。

雪を見ないことにしたのです。


ですから、もう二度と降ることはありません。


ざくざくと踏んでも、じゃぐじゃぐと弄っても。

ざりざりと削っても、しょりしょりと拭っても。


雪がなくなって、静寂だけが取り残されました。

では、静寂の行き場を考えて遣らねば。


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下手から“黒い頭巾の男”が中央へ向かいます。

台詞を終えると、その場に倒れます。

下手から黒頭巾の演者が二人、そこへ向かいます。

二人は“黒い頭巾の男”を担ぎ、下手へ戻ります。


舞台の明かりが消えます。

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