1.黒頭巾
石油ストーブのにおいがする。
するすると靴下の滑る音、
洋服のこすれる音、
ひとたちのわずかな呼吸が聞こえる。
まこと、罪深きことでございます。
お許しください、お許しください。
皆
泣いている者もいる。
そして、
皆黒い頭巾を被っている。
助けてくれ、助けてくれ。
嫌だよう、やめてくれよう。
あれは女の人だろうか。
頭巾から髪の毛が見えている。
あれは老人だろうか。
背中が曲がっている。
私のしたことです。
どうか、どうか、ご容赦を
みんなどうして謝るのか。
みんなどうして悲しんでいるのか。
私も謝らなくてはいけないのか。
悲しまなくてはいけないのか。
おお、おお、ああ、止めて。
止めて、おねがい、おお、ああ。
少し考えてみたけど、分からなかった。
たぶん、みんなただ許してほしいだけなんだと思った。
だから悲しんでみたり、
泣いてみたりしているんだろう。
ダメ、ダメ、なんで。
どうして、許して頂戴、堪えて頂戴。
部屋の中は泣き声と、ぶつぶつ唱える声と、
ため息でいっぱいになってしまった。
広い広いじゅうたんの上で、
私はどうしていいのかよく分からなかった。
--------------------
下手から黒い頭巾を被った演者が十数人、中央へ向かいます。
台詞を終えると、むせび泣きながら下手へむかいます。
舞台の明かりが消えます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます