緞帳 -杉吹峠の怪異-

順番

0.梗概


杉吹峠のこと


杉吹峠は険しい峠です。

冬には、深い深い雪に閉ざされます。

寒い寒い季節ですから、家に篭ります。

誰も、こんな季節に杉吹峠を抜ける人はいないのです。


ふもとの町の外れに、灰色の建物があります。

大きな建物ですが、中にはなにもありません。

がらんどうのホールなのです。

体育館のようでもありますが、

床にはすべて絨毯の床材が敷かれています。


町の人々の中の幾人かは、毎日毎日そこへ向かいます。

そして、その中で、お話しをします。

みんながそうしてきたからです。

みんながそうしてきたからです。


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誰もいない舞台があります。

“人物”が上手から中央へ向かいます。

台詞を終えると、上手へ戻ります。


舞台の明かりが消えます。

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