第7話 ホール、入場客整理
あの人が雨の中を走っている。街灯の監視カメラは既にわたしの眼に変えてある。追跡する背広たちの位置を確認し、周辺の通信設備を利用して通信に介入。GPSにでたらめな情報を流す。緊密だった包囲はほどけ、あの人が通る道が開けた。特にしつこく追いかけている一人は電脳移植を受けているようだ。
ならば手加減はしない。大容量のジャンクデータに論理爆弾を混ぜて送りつける。擬似感覚の檻にとらわれ、回線を焼き切られた男は悲鳴を上げながらのたうった。同様の攻撃を他の背広が持つモバイル機器にも行ない、機能を破壊。これでもう、彼らがあの人を追うことはできない。
私は仕事を終え、キーボードの機能を切り替えた。プログラムを打ち込むときには正確に動く指先が、今は少し震えた。何度も練習したから、大丈夫。発表会直前の子供のような気分で。最初の一音を刻んだ。
あの人が最初に演奏した曲。
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