最終話 犯人
「罪」を犯す人はなんらかの動悸がある。「金」「女」というのは明確だが「快楽」を得るがために「事件」を起こす人物もたまにいる。
真琴の姿は「実家」にあった。
玄関を入ると「ただいま~~」と声をあげた。
「はーい」と母の声が聞こえた。
奥では若い女性と父の声が聞こえる。
「香」がその女性である。
香とは幼稚園の時からの付き合いである。お互いの事は全部知っている。香とは家族ぐるみの付き合いをしており、たまに(というか、香は毎日のように通って両親と夕食をとる。)家族同士が集まって食事会をする。
「はははは」と愉快な父義春の声が響いている。
いつもの光景だ。
ずかずかと真琴はリビングに向かっていく。
途中母の千賀が「どうしたの?」といったがそれを無視する。
父の前に仁王立ちになると、「犯人はお父さんね」
真琴は大きな声を出した。
「うぅ」
義春の呻く声が聞こえる。
「実はな、、、香ちゃんに例の指輪の話を聞いてな。。。」
義春はゆっくりと語り出した。
「お前にも人並みの幸せになってもらいたいっておもってな。あんなことをした。。」声は低かった。
「だからってあんな手の込んだことしなくても。。。」
「お前だっていい年なんだ。恋人の一人や二人いたって不思議じゃない」
(二人恋人がいるのは「不思議」になるが)
「言葉でつたえればいいじゃないの?」
しばしの沈黙が包まれた。
香がゆっくりと席を立つと
「おとうさんね、あの日真琴の仕事してる姿をみてたのよ。」
あの日とは店長の首に「脅迫状」が届いた日である。
「真琴がんばってた。そう言ってうれしそうだったよ。」
「すまなかった。」父義春は頭を下げた。
しばし時間が流れ
「さっ、とりあえず晩御飯にしましょ」
母千賀の声は明るかった。
こうして「夕食」は始まった。
久しぶりの真琴の笑い声が聞こえてくる。
「事件」が解決してから真琴は「指輪」を売った。
「そのお金」は両親の旅行の費用に消えていた。
夫婦二人きりの旅行が終わった後「大量の」お土産が真琴を待っていた。
一人では食べきれなかったのでみんなに配った。
「ありがとう。しかしこの写真のお父さんいいね」
副店長が見ていたのは「両親の旅行の写真」だった。
笑顔の母に対して父はこわばっていた。
「あ、そういえば、今日「面接」があるんだよ。なんでも元銀行員だったらしいよ。次は「経理部長」かなぁ?」そういうと副店長は煙草を吹かす。
面接のためモフ店長は「外出禁止」である。首輪をして真琴の膝に眠っている。
夕方になってモフ店長はふいに起き上がると真琴の膝を飛び出した。
真琴は本を読んでいたためリードを引っ張るタイミングがずれた。
店長は店を出ると左に向かった。いそいで真琴がこれを追う。
夕日に照らされて二つの影を見た。
一つは店長の旦那さん「トム」
もう一つの影は見知らぬものだった。
正面を見るとスーツを着た男性が立っている。
スマートな男性だった。
「すみません。こちら「黒猫堂」でしょうか?」
男性は尋ねる。
「はい」
「よかった。」
男性は胸を下す。
「いや。道に迷いまして、商店街の方に伺いましたら「この猫」ついていったらいいよ。と言われましてね。」
そう言うと膝を下し、モフ夫婦をなでている。
「賢い猫ですね」
しばらくして思い出したように立ち上がり頭を下げる。
「わたくし、本日面接のご予約をいたしておりました「高木 充」と申します。」
真琴は慌てて頭を下げる。
「と、とりあえずこちらへ」
そういうと案内するかのようにモフとトムは店に入る。
ふと真琴は充の顔をみる。
頬がポッと赤くなる。それを隠すよう奥に導く。
「恋」という言葉が脳裏に浮かんだ。
完
指輪 若狭屋 真夏(九代目) @wakasaya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます