第3話 迷探偵登場

 かつて「名探偵登場」という映画があったが作者は見たことがない。

「指輪を誘拐される」という「事件」をどう扱ったらいいのだろう?

真琴はそう思った。

「誘拐」されたといっても警察は動いてくれないだろう。

「窃盗」として扱ってくれるだろうか?

「どうせ、どこかにおとしたんでしょ?」と言われるに違いない。

うむ、とうなる。

そうすると「事件」当時の記憶をさかのぼってみる。

指輪をなくす前日、真琴は普段通り会社に行き、帰りにカフェで友達の香とおしゃべりした。その時も指輪をしていた。

「まだ、そんなものしてるの?」と香が言ったからだ。

それから家に帰り、指輪を指輪入れに戻す。

全く、疑う余地はない。

困ってしまった。

次の日、仕事を終え帰宅すると、アパートの鍵が開いていた。

ゆっくりとドアを開け「だれ?」と声をだした。

「真琴、窓には二重ロックをしろ、不用心だぞ。若い女の子が。。」

懐かしい声がする。

声の主は父、義春、隣町で警官をしている。

「お父さん、来るなら電話ぐらいしてよ~~」

「昼休み、店長さんに挨拶してきた。たまには電話ぐらいよこせ。」

義春は「言葉は悪い」が「娘思い」である。

姉の千春が結婚したとき、大泣きして、母を困らせた。

真琴は末っ子である。

「男のにおいはないな。」と義春は言う。

「私もう大人だよ」

「娘は死ぬまで娘だ。」義春は胸を張る。

「何の用?」

「別に用はないが、ちょっと用事があって寄ってみた。」

そういうと床に胡坐(あぐら)をかいた。

義春は警官ではあるが、担当地区の警官の仕事は、ほとんどが雑用だった。

「たぬきがいる」という電話や落とした10円玉を拾った子供の対応に追われていた。事件らしい事件はなかった。

「事件を解決したことはないが」警官は警官。捜査の仕方を知っている。

しぶしぶ、真琴は「事件」の詳細を話す。

「まったく、お前ってやつは、、、だから嫁にいけんのだ」

さっきは「男のにおい」なんていってた口がこれだ。娘には強気に出るが、去年産まれた孫には弱い「じいじ」である。

「任せとけっ」と胸をたたく姿に「心配」になった真琴だった。

かくして「迷探偵」は登場する。

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