地球外少年少女

 この作品は、電脳コイルの磯光雄監督が脚本も担当した監督の15年ぶりのオリジナルアニメです。2022年1月28日からネトフリで配信が始まって、同日から劇場公開もされていました。そんな作品が2023年の11月からNHKで放送。これで多くの人の目にもとまるようになりました。


 あらすじはAIの発達で誰もが宇宙空間に行けるようになった2045年の日本の民間宇宙ステーションを舞台に、そこに集まった少年少女達の冒険物語。 最近では珍しい本格的なSFです。情報量が多すぎて1回見ただけでは脳の処理が追いつきませんでした。SFに慣れていない若い人はついていけたのでしょうか?

 これは逆に言うと、人気を犠牲にした作品とも言えます。今の流行になっていませんからね。カクヨムでもそうですけど、人気ジャンルは人気ジャンルと言うだけで人気になるんですよ。不人気ジャンルの話を制作した時点で逆境なんです。しかも原作人気という後ろ盾がないオリジナルアニメでそれをすると言う。ギャンブルですよねえ。


 しかしそこは電脳コイルと言う革新的な作品を作った磯光雄監督。この前作のネームバリューだけも見る価値あるでしょと思った人は少なくないと思います。私も期待した1人でしたし。

 ただ、物語的にもテーマ的にも重要なシーンがカットされているため、6話を見終わった時点で感じたのは『色々と足りない』と言うものでした。1クール作品を無理やり半分に圧縮したみたいな。だからああ言う終わり方になったのでしょうね。


 前半はとても良かったんですよ。子供達の自由奔放さが楽しかったですし、SF的な用語を現象と共に説明して分かりやすかったですから。ただ、後半の怒涛の展開がね……。すごく急ぎすぎていた気がします。

 例えば、結局ナサは何故犠牲にならなきゃいけなかったのか? 最後のシーンはどう解釈したらいいのか? 丁寧に作っていれば納得出来たであろう展開が納得出来ないまま押し流されてしまった。これは本当に残念でした。


 それと、この作品はAIの捉え方が独特ですよね。人知をとっくに超えていたり、それによって予言を残していたり、なのに最後はお約束の人間の可能性は予測を超えるんだって流れだったり……。私は飽くまでも『この物語内でのAI』と言う認識で見ていましたよ。

 クライマックスでセブンとリンクした登矢が覚醒して11次元の思考をするのですけど、それが何故11次元なのかの説明はありません。設定上はしっかり設定されているのでしょうけどね。AIが人類の先の感覚を進むとどうなるかの思考実験を見ているようでした。


 アニメのクオリティはすごく高かったです。SF的な考証に沿って作られたであろう現象の描写とか電脳コイルを思わせるハッカーバトルとか。演出がすごかったので意味が分からなくても流れで楽しめると思います。

 完全な状態で作られていたら更に深く楽しめたのだろうなあ。残念。


 と言う訳で、この作品はSF作品が好きな人や、電脳コイルが好きだった人、元気な子供達の冒険物語が好きな人にオススメです。

 結構難しい話でもあるので頭を使う話が苦手な人や、重要なシーンがカットされているので物語を完全に理解出来ないと楽しめない人には向きません。


 私はとても楽しく見ていましたよ。見終わった後にちょっとモヤモヤは残りましたけど(汗)。

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