屋根裏のラジャー

 この作品はイギリスの詩人・作家のA・F・ハロルド先生の児童文学『ぼくが消えないうちに(原題:The Imaginary)』が原作のアニメ映画です。原作はイギリス文学協会賞受賞をはじめ、ケイト・グリーナウェイ賞、カーネギー賞などにノミネートされ、世界の文学賞を席巻しているのだとか。

 私は原作を未読なので、映画が原作通りなのかアレンジされているのかは分かりません。ごめんなさい。宮崎映画なら100%アレンジされているでしょうけど、ポノック映画ですからね。原作に忠実なのかしら? どうなのかしら?


 観た感想を一言で言えば、児童文学だなあと。良くも悪くも。最近はこう言う題材をアニメにする事が減っているので、ポノックには頑張って欲しいところです。製作エピソードを読んだ人はご存知だと思いますけど、この作品はキャラの影の表現が普通の2Dアニメよりなめらかに処理されています。

 これは最新の技術で達成されたもので、手間とお金がかかって一時期はポノックが倒産の危機にまで陥ってしまったのだとか。凝りすぎィ!


 物語の出来に関しては正直微妙なところがなくはありません。説明不足だったり、伏線が投げっぱだったりしているように感じましたので。ただ、物語はうまく収束しておりますので、細かい事を気にしなければOKかな。

 整合性よりも、この映画はやはりアニメーションの表現の素晴らしさを見て欲しい作品ですね。夢中になって観ている内に終わりますから。練り込みが甘いのは上映時間の関係なのかも。長い作品を映画の尺に収めるには情報の取捨選択が大事になってきますからね。


 この映画のメインターゲットはお子様ですし、ならば、ある程度物語の完成度を犠牲にしても映像的に楽しければいいのではないかと思います。不満を感じるのは大人ばかりでしょう。

 家族で観た場合、観終わった後で子供から質問責めにされるかもですが。


 アニメのクオリティは高いです。この映画でしか観られないような表現もたくさんあります。アニメの表現を楽しむためだけに観てもいいくらい。よく動くし、スピード感もあるし、目まぐるしく変わっていく背景とかを観ているだけでも贅沢だなって思います。やはりアニメの原点は絵が動くと言う不思議を体感する事ですよね。


 主役のラジャーは寺田心君が演じてますけど、とても上手でした。本職の声優さんじゃなくても、俳優さんなら上手ですよね。この映画では俳優さんがたくさん声を当てていますけど、皆さんハマっていたと思います。

 お母さん役の安藤サクラさんは、ちょっと微妙……だったかもですが(汗)。


 映画の主題はイマジナリーフレンドですけど、実際のそれと映画のそれは少し違うような気もします。その辺りをどう捉えるかでも、映画の評価は変わってしまうのかな。でもファンタジーですからね、こう言う話があってもいいと思いますよ。


 と言った感じで、この作品は児童文学作品が好きな人にオススメです。後は、斬新なアニメ表現を見るのが好きな人も楽しめるかな。

 ただ、物語は整合性が大事と考えている人には向かないかも知れません。それと、伏線は全て回収されないと気持ち悪いと言う人にもオススメ出来ないかも。


 私はとても楽しく観ましたよ。あの映像表現を観られただけでもお釣りが来ましたね。流石、会社が傾くほどにお金と時間をかけただけはあります。

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