グッバイ、ドン・グリーズ!

 この作品は日本だけでなく世界で評価を得た『宇宙よりも遠い場所』のスタッフが再集結して制作した劇場用アニメです。よりもいで感動した私は公開されるのをずっと待っていたんですよ。

 で、映画上映時に渡された小冊子。初回上映特典ですかね、これ。渡されてかなりテンションが上りました。この少冊子の情報がね、濃いんですよ。これさえあればパンフレットいらないくらい。いいんですかね、こんなの貰ったらパンフレット売れないですよ?


 肝心の映画の方なんですけど、結論から先に言っちゃうとよりもいほどは感動しなかったかな。作品としてのクオリティは高いんですよ。映像も音響も高品質で、これは映画館で観るべきレベルです。その意味で劇場で観た事を後悔はしていません。贅沢な映画体験をさせてもらったと思います。

 ただね、どうしても比較対象がよりもいになっちゃうんですよね。あれと比べちゃうとねえ。う~ん。


 この映画、映画の尺の中にエピソードを詰め過ぎな気がします。1クール作品で見たかったな。匂わせで終わっている各エピソードもしっかり設定されているみたいなんでね。この尺に収めるためにかなりバッサリカットしている感じがします。実際はどうだったか分かりませんけど。


 後ですね、ネタバレなんでここでは書けませんけど、映画であるキャラのとても大事なシーンが描かれていません。敢えてカットしたのかもですけど、そのシーンは描くべきだったと思います。上映中いつそのシーンになるのかと思っていたら最後まで出てこなくてちょっと失望しましたもん。上映時間が伸びてもこれは入れて欲しかったなぁ。


 先程も言及したように、アニメのクオリティは高いですよマジで。予告編で出てくるあの滝は本当に壮大ですし、花火大会のシーンがあるんですけど、その花火もすごい描写で素晴らしい映像と音に圧倒されました。

 もうね、これを体験するためだけに映画を観てもいいくらいです。


 気になったのはキャラクター造形。やはり監督が女性だからでしょうか。微妙に理想の少年像になっている気がします。ビューティフルドリーマーを女性が見たらあのラムは男性が考える女性だと看破したように、男が見るとあの少年達は地に足のついた少年には見えんのですよ。

 後、やたらと深い名言ぽいセリフを喋りすぎ。高校一年生の男子はもっとおバカです。悪くはないんですけどね、ちょっと気になっちゃって。


 伝えたいテーマは分かるのですけど、終盤にかけての彼らが行動力の権化になっていて、そこも気になったなぁ。映画のラスト、少年達だけですごい冒険をするんですけど、協力者がいないと出来ないような事をやり遂げちゃうんです。そこに至る描写がまるままカットされているんで、現実感が薄いんですよね。それも残念。

 あれが大人になってからの冒険と言うなら、まだ納得も出来たのだけどなぁ……。


 と言う訳で、よりもいレベルを期待するとちょっとガッカリするかも知れません。作品のクオリティは高いので、映画代払う価値はあります。余計な期待をしなければ十分に面白いですよ。情報量の多い作品なので、2回は観た方が色々な事に気付けて楽しめるかも。

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