日々徒然趣味日記

鹿の王 ユナと約束の旅

　この作品は２０１４年９月に上下巻、２０１９年３月に外伝がそれぞれ刊行された上橋菜穂子先生の同名小説が原作のアニメ映画です。緊急事態宣言などで何度も上映が延期されて、２０２２年の２月にやっと上映が始まりました。正直、１月にオミクロン株の６波が来たのでまた延期になるかもって思っていたので、そうならなくて良かったです。

　とは言え、この６波で劇場に足を運ぶ人は減ったと思うので、やはりそこは残念ですね。今の時代だからこそ観て欲しい作品ですのに……。

　この作品はですねえ、謎の病気とそれを利用しようとする権力との戦いの物語なんです。この病気の描写が今の状況とシンクロしちゃうんですよね。原作は２０１４年の作品なのに。まぁ、謎の凶悪ウィルスが人類を滅ぼずぞってテーマは昔からあったのですけどね。そう考えると、手垢のついたテーマとも言えます。舞台が現代じゃない事を除けば。

　この手のテーマが主題の物語って、大抵現代が舞台ですからねえ。

　私がこの作品を観た時に最初に思ったのは「あ、主人公本業の人じゃないな」でした。やっぱアニメを好んで見る人にとってそこは重要なんスよ。けど、声の演技が上手だったらあんまり気にはしない方です、私。

　違和感を感じた主人公ヴァンの声は、堤真一さんでした。やっぱどっかで聞いた事がある声だなーって思ったんですよ。で、キャストを確認すると俳優で活躍している人が何人かいらっしゃいますね。ああ、そう言う映画なんだなって思いました、ええ。オリジナル劇場アニメあるあるです。

　いや皆さんお上手でしたよ。違和感を覚えたのは堤さんだけでしたから。その声も、あ、どこかで聞いた事のある人だって意味ですから。最初の方はちょっと声の演技とキャラの演技がシンクロしていないような気もしましたけど、すぐに慣れましたしね。まぁ演技を生業にしている人ですからやっぱそこはプロですわ。

　この作品はメインスタッフがジブリで活躍した人と言うのもあって、もののけ姫の匂いがするんですよね。作ってるのはプロダクションＩ.Ｇなんですけど。て言うか、原作自体ももののけ姫を参考にされたのかも知れません。

　例えば、病気を克服したヴァンは超人的な力を身に付けるのですけど、その描写が呪われたアシタカを想起させたりね。

　何故タイトルが鹿の王と言うのかと言うと、鹿の王って呼ばれる伝説があって、その伝説の人物がヴァンと重なるから。伝説だけではなくて、彼は鹿扱いが抜群に上手いんですよ。誰にも扱えなかった鹿を簡単に手なづけたりね。それで、常に鹿に乗って移動するんです。

　そう言うところも、ヤックルに乗って移動するアシタカみたいですよね。そう言えば、シシガミ様も動物形態の時は鹿っぽい姿でした。

　もののけ姫っぽいところと言えばもうひとつ、この作品には山犬が出てきます。それも沢山。謎の病気のウィルス的なのを持っているのがこの山犬なんですよ。抗体を持ってない人が噛まれたら感染して１００％死にます。で、この山犬を操る犬の王と言うのも出てきます。この病気を克服して操れる不思議な力が植物の力だったり。ここももののけ姫っぽいです。

　あ、そう言えばイノシシも出てきますわ。狩りの獲物としてですけど。

　後、タイトルが鹿の王と言うだけあって、この鹿が物語の重要なキーになるんですよ。あそこまで物語に深く関わるとは思いませんでした。この辺りはネタバレになるので書きませんけど。この作品世界での鹿の存在感、すごいです。

　謎の病気に罹患して唯一生き残ったヴァンと幼女のユナ。この病気を利用して侵略した国を倒そうとする侵略された国の権力者達。原作はどうか分からないのですが、映画ではハッキリした決着は付きません。まぁもののけ姫も曖昧な終わり方をしましたものね。結末までもののけ姫リスペクトかどうかは分かりませんけど。

　て言うか、この作品ともののけ姫が似ているって言うのは、私が個人的にそう思っているだけですから。単なる個人の感想なのですよー。パンフでは何かしら言及しているのかもですが、買ってないので知りません。どうなんでしょうかね？

　横軸はそう言う権力争いなのですが、縦軸は病気に対する真相の追求です。そこでお医者さんが出てくるんですね。ずっと謎だったこの病気をお医者さんが調べて、そして――この結果も一応ネタバレになるのでぼかしておきます。ぼかす意味もあんまりないかな（汗）。

　この話のもうひとつの軸は血の繋がらない父と娘の物語。この心の交流も泣けます。お約束の展開ですけど。

　考えてみれば、物語のラストももののけ姫に似ている気がします。ああ、何だか最後までもののけ姫に似ているばかり言ってますね。飽くまでも個人の感想ですから。どうか平にご容赦をお願いしますですよー。

　この作品は大自然と人、人と動物との関わりを描いた作品が好きな人、困難を乗り超える話が好きな人にオススメです。ジブリ映画、特にもののけ姫が好きな人にもオススメかな。謎の病気とそれを解明しようと頑張る話が好きな人にも。

　私も最後まで楽しく観る事が出来ましたよ。当然、オススメです。