Sonny Boy -サニーボーイ-

 この作品は監督を務める夏目真悟氏が原作と脚本も兼ねるオリジナルアニメです。監督によると、私小説のような作品なのだとか。監督がやりたい事を全て詰め込んだ作品になっているみたいですね。だから近年のアニメにしてはオリジナリティが際立っているのでしょう。既存のテンプレに沿っていない物語展開が新鮮です。実験アニメにも近いって言うか。


 挑戦的な作風ではありますけど、昔のNHKのSFドラマ、少年ドラマシリーズとかのそっち系の作品を見た事がある人には懐かしさも感じるかも知れません。学園モノSFですからね。最近はこう言うドラマもあんまり見られなくなった気がします。ドラマ系は興味がないのもあってあまり知らないのですが。


 そりゃ、アニメで学園モノが今までなかった訳ではないです。ただ、群像劇になるとあまり見られないですよね。クラスメイトが多くいても、関わるのはその中の数人だけだったり。原作モノでも少ないのに、オリジナルでそう言う作品ともなると私は咄嗟には思いつきません(汗)。


 この作品の元ネタは漂流教室ではあるのでしょう。私は漂流教室をちゃんと知らないので、この作品にどこまで漂流教室要素があるのかは分かりません。ただし、この作品はサバイバル作品ではないんですよね。そこにこの物語のオリジナリティがあると言えます。

 そう、この物語は生き抜くのがテーマではないんですよ。学生だけの空間を作ってそこで色々と大切な事を経験して行くと言う話――に、なるのかなぁ? それは今後の展開次第なのでしょうね。


 学校が漂流して生徒だけが取り残され、各生徒は異能力に目覚る。特に外部から敵が現れる訳でもないので、その能力は基本バトルに使えるものではありません。攻撃魔法とか治癒魔法とかではないんですね。近いものを持つ生徒はいますけど。

 どこからともなく何でも取り寄せられたり、目指す場所が分かったり、周りの領域を別の世界に移動出来たり、重力をコントロール出来たり、プログラムを実世界に反映する事が出来たり、謎の声を聞く事が出来たり……しょぼい能力ではどんな水も美味しく飲める能力なんてのもあったり(汗)。


 話の構成も毎回違うパターンに挑戦しているみたいで、その辺りも実験アニメっぽいです。4話では普通の人には見えない猿達の野球の話がテーマですし。一応、話が進む度にバラバラだった生徒達が少しずつ理解を深めては行ってますね。主人公の長良の無気力な所が変わっていくのがテーマと見ていいのかなぁ。


 この挑戦的な話は漫画家の江口寿史氏原案デザインのキャラ達によって進められていきます。このアニメの売りのひとつですからね。そりゃもう再現度高いですよ。江口氏のテイストを存分に感じる事が出来ます。デザインに古臭さを感じさせません。

 とは言え、この感想は私と言うおっさんのものですので、今の若い子には古臭いと思われてるのかなぁ……。時代を超越したデザインだと思うのですが。


 このアニメの特徴は作品の色使いにも反映されていますね。何て言うか夏! って感じがします。色が濃いのかな。一話の真っ黒空間もひと目ですごい絶望を感じましたし。あの色使いにも何らかの意図があるのでしょうね。


 絶望感のない安全な漂流生活の中、ついに大人が現れたところで執筆時の最新話(4話)は終わりました。5話からは第二部が始まりそうです。ここからどんな展開が待っているのか楽しみです。残酷なように見えて、必ず解決策が提示される展開なので結構安心して見られますね。今後も同じように進むとは限りませんけど。


 音楽的にも挑戦的な事をしているみたいですけど、その辺りの素養が私にはないので詳しくは分かりません。ただ、この不思議な作風に合うように使われているのは分かります。詳しい人はこの音楽の使われ方にも注目するのでしょうね。


 江口寿史ファンの人や監督の作風の好きな人、実験アニメ的な作風が好きな人、いにしえの学園SFものが好きな人とかにオススメです。私も毎週楽しんで見ておりますよっ。

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