第1.5話
朝は騒がしくて表に出る気も起こらなかったけど、そろそろ大丈夫かな。
そんなことを思いながらチラッと外を覗く。
「もし今日帰るまでに女の子と出会ったら、その子が運命の子だな」
何?まだ誰かいるの!?
不意に聞こえた男の声に驚き、家の中へ引っ込む。
少し気になってもう一度通りを覗くと、茶色い髪にピアスを開けたワルっぽい男子高校生が、桜の木を見上げながら立っているのが見えた。
気になって見ていると、男子高校生は赤面したりキョロキョロしたり落ち込んだり、ちょっと歩いて振り返って今度は寂しそうなつまらなさそうな顔をして、最後は拗ねたような顔で去って行った。
その様子がおかしくて、そしてなんだか可愛くてクスッと笑ってしまった。
まだ幼さの残る拗ねた背中が見えなくなってから家の中へ戻る。
『もし今日帰るまでに女の子と出会ったら、その子が運命の子だな』
屋根から軒下に雨水が落ちる音が聞こえてくるだけのひっそりとした静かな薄暗い家の中で、その言葉と恥ずかしそうな横顔を思い出す。
確かに恥ずかしいセリフだが、おそらく本心であろうその純粋な言葉の響きがくすぐったくてまた頬がほころぶ。
「運命の子…」
そう呟いてから、不意に自分がもっと小さかった頃のことを思い出す。
11年くらい前に会ったあの男の子も、さっきの高校生くらいに成長しているんだろうか。
それとももしかして…
「…今度会えたら、話しかけてみようかな」
自分に言い聞かせるように呟いてみた。
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