第3話 モラリストとファンタジスタ
少し昔の話ですが闘劇魂という冊子でモラリスト、ファンタジスタという区分がありました。
理論派か感覚派かという分類、この分類ほかにチキン(守り)バイオレンス(攻め)などとY座標があるわけですが、まぁそれほどそこは重要じゃないと私は思っています。それより大事なのは理論派か感覚派かの方。理論派というのは何でしょうか。闘劇魂の説明では「セオリーを守る人、フレームを把握して理論上いいと思われる行動の最善を尽くす人、またそれが実践できる努力をする人」ということになっていました。ファンタジスタはその逆でなんかこうした方がいい気がする、という直感に従ってプレイする人。
どっちが強いのか
そりゃ本当に理論上動けるならモラリストが強いに決まってる。コンピューターと人間が勝負したらまず勝てない。僕らが戦ってるCPUというのは人間が勝てるようにわざとクセを作ったりしてアルゴリズム調整してある。本気で勝ちに来られたらトレーニングモードの全段ガード投げ抜けマンになって終わり
人間がそうは動けるわけないのでモラリストというのは極論すると既に破綻のあるスタイルです。なぜ人間がCPUのように動けないかというと、どんなにコマンド入力が正確な人だったとしても状況が要求する最善の行動を選び出す時間にどうしても限界があるからですよね。モラリストというのはいちいちこれを言語化して行動に移してるのです。感覚派はこの言語化のプロセスをすっ飛ばして正解を選んでるから判断が早いということになると思います。
ウメハラさんも当然戦いを言語化しないファンタジスタだと思った。実際ヌキさんはウメハラさんにあるイベントの中でマイクを持って言ってます。「ウメハラ、うちらぐらいはさー、感覚派でいようよ」これは闘劇壇上にフレームを記したムックを持って上がるときどさんをある意味揶揄して言ったような流れだったと思いますが、やはりヌキさんから見てもウメハラはファンタジスタと。
ところが言語化しないと思っていたウメハラが「勝ち続ける意志力」を皮切りに著書をバンバン出すわ、放送では攻略をどんどん言語化するわで、あれ、これをするようになったらもう往年より弱くなったのかな?それともファンタジスタではなく実はモラリストだったのか?
ちなみに一般のレベルでいうモラリストみたいな理論はウメハラさんと同等のプレイヤーたちはほぼ全部揃えてると思いますよ。このレベルでいうモラリストかファンタジスタかというのは、最後の最後まで判断を論理的に導こうとする人か、直感を信じようとするかの話
話は戻しますが、ウメハラさんは別に弱くなったわけではなく成果を残すし、それにやっぱりファンタジスタだという根拠を見つけました
ときどさん曰く「あの人の言うこと全然信用ならんわー。こないだスト5では投げはダメだとか言ってて、その次対戦したらもうあれよ?柔道家。ビタンビタン投げに来られた。もう絶対信用しねー」
もともとウメハラコラムなどの言語化されたものを見て思っていたんです。昔話などをさせるとかなりウメハラの話は面白い。でも攻略の話になると急に何か、議論の枠組みが外れてない?という場面がいくつかありました。ときどさんと読み合いについて語っていたときもときどさんのは理論的だけどウメハラさんのはちょっと議論ベースが拡大されてる感じ。
つまりこう解釈したんです
ウメハラさんの言語化は先天的な能力ではなく獲得スキルだと。おそらくはウメハラコラムなどメディア露出に当たってどうしても言語化に迫られるとそれがだんだん楽しくなり、言葉の繰り方が上手になってきたが、自身が格闘ゲームに感じている宇宙はいまだ言語化できていないのだと。これまでの著作は全てゲームの攻略ではなく成長の過程と概念をお話ししたものだから、そういう哲学はウメハラ、言語化の訓練詰んでプロになってるけど、しばらくゲームの攻略ライティングはやらないだろうなという印象。これに何だかほっとしています。
これは私見ですが、格ゲーをやるにあたっては必ずしもロジカルシンキングが最善と限らない。先ほど言ったように反応が遅れるだけでなく、分析した結果「仕方がない」みたいな結論が出てしまったらどうするのかという問題がある。
ロジカルシンキングは発想の枠組みを逆に言えば狭める効果が出てしまうのです。分析した結果仕方がない、負けたり成長を止めるわけにはいかない、それより何となくこっちに光があるかもしれない、この直感が実は格ゲー以外でも大切な今の殻を破る手段だと思うし、ウメハラの華のあるプレイのヒントもまたそこにあると思う
ただ、それで終わるとこれまでのウメハラ論と変わらないので、まだまだこの後の章でウメハラのファンタジスタとは結局何なのか分析していきます。つまり、私は100%モラリストです
次回は第4話「Daigo the beasTV」
7月12日午前に更新予定
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