第14話 ふくふく満月さんの優しい「おやすみなさい」
「ああぁ~、今頃、ママどうしてるかなぁ~」
ママは、弟が怪我をしたので今晩は病院に一緒にお泊りです。
パパは出張で、遠くの町のビジネスホテルというところにお泊りです。
そして、僕は、僕のお家に誰もいなくなってしまうので、おばあちゃんのお家にお泊りです。
パパは今朝、おばあちゃんのお家に僕を連れて行ってくれる時に言いました。
「パパがお仕事を断ればいいんだけど、そうもいかない。お客さんが待っているから、ごめんよ。」
「大丈夫だよ。パパ!僕、お兄ちゃんだから。」
「そうかぁ。お兄ちゃんだもんなぁ。よぉーしぃ、パパも仕事頑張って、なるべく早く帰ってくるよ」
「うん♫」と、僕は元気に答えてけど、本当は(パパ行かないで・・)て言いたかったのを我慢したんだ。
それから僕は、おばあちゃんのお家に行って、おばあちゃんとお買い物に行ったり、ご飯んを食べたり、テレビを見たり、おばあちゃんに絵本を読んでもらったりした。
夜になって、お風呂に入って、おばあちゃんに「おやすなさい」をして、子供のころママが使っていた、ママのお部屋のベットにもぐりこんだんだ。
(チョットだけ、ママの匂いがしたよ、嬉しかった)
でも、周りがだんだん静かになって、おばあちゃんが廊下の電気をパチンと切って明かりが消えると、急に静かになって・・、僕は悲しくなったんだ。
だって、聞こえてくるのは、僕のドクン、ドクン、の心臓の音だけだったから。
怖くなった僕は、ベットから出て窓を開けたんだ。どうして開けたのかは分からない。
どうしても、そうしたかったから…。
そうしないと、大きな声で「パパぁ~、ママぁ~!」て、泣いておばあちゃんを困らせてしまいそうだったから、たぶん、そうだから…。
「どうしたの」窓を開けた僕の耳に優しい声が聞こえた。
「誰ぇ?」
僕は、窓の外をキョロキョウ探したんだ。
そしたら「ここよぉ」と、もう一度優しい声がした。
どうやら、僕の頭の上のほうから声がする。
僕は顔を上げた。
そこには、にこにこ笑顔の『ふくふく満月さん』がいた。
僕は、優しい笑顔のふくふく満月さんを見上げながら聞いたんだ。
「いまの声は、ふくふく満月さん?」
僕の声に、「そうよ」と、ふくふく満月さんは、にこにこ優しい笑顔で答えてくれた。
「どうしたの?こんな夜遅くに」
「僕、寂しくて、眠れないんだ」
「どうして、寂しいの?」
「弟が怪我をして、ママは弟と病院でお泊り、パパは遠くの町でビジネスホテルっていううところにお泊りなんだぁ」
「そおぉ、じゃぁ今日は一人なの?」
「うぅん。僕がお家で一人になるから、おばあちゃんちに来たんだ。でもぉ、僕のお家じゃないんだぁ」
「だから、寂しいの?おばあちゃんのお家でも」
「うん。だって・・、パパも、ママも、弟もいないいだもん」
僕は、お兄ちゃんなのに泣きそうになった。
「さっき、ここに来る前に、遠くの町で、寝ないでビジネスホテルの窓からお兄ちゃんを心配してるパパを見たわぁ」
「えっ!ほんとぉ、ふくふく満月さん」
僕はびっくりした。そして、今朝のパパの顔を思い出した。
「ええ、本当よ、それに、お兄ちゃん、お兄ちゃんって、病院で泣いている弟くんを見たわぁ。弟くんを抱いて、お兄ちゃんを心配してるママもみたわぁ」
「ママも、弟も!」
僕は、寂しかったけど、嬉しかった。
パパやママ、弟の顔を思い出して、僕は、だんだん元気が出て来た。
元気が出てきて、何だか嬉しくなった僕はふくふく満月さんに言った。
「ふくふく満月さん、僕、お兄ちゃんだから一人で寝れるよ」
「そおぉ」ふくふく満月さんは、優しく僕に笑いかけてくれた。
僕は、何だかとっても優しい気持ちがしてきて、ふくふく満月さんに「おやすみなさい」を言って、(確か、言ったと思う、でも~、嬉しすぎて忘れたかも知れない)ママのベッドにもぐりこんで寝てしまった。
(眠りにつきながら、ふくふく満月さんの優しい声が『おやすみなさい』と言ってくれたような気がする。)
翌朝、目が覚めて、あわてて窓を開けたけど、そこには、もう、ふくふく満月さんはいなかった。
僕は、眩しいキラキラ太陽さんに朝の挨拶をしながら、ふくふく満月さんに、今夜また会えるかなぁって思ってた。
そしたら、僕はちゃんと『おやすみなさい』って言うんだ。
だって、僕は・・、お兄ちゃんなんだもん!
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