第9話 長々まつ毛の七色ヘビさんと、山ねずみさん
ガラン、ゴロン、コロコロォ~
凄い音に驚いて、山ねずみさんが上を見上げると…、
丁度、崖の上の道を走り去るトラックから何かが飛び出して落ちてきます。
ガサ、ドサァ・・・ドサドサ・・・ドサァ
シ~ン・・・、静かになしました。
どうやら崖下の、小さな南天の木の大群の中に落ちたみたいです。
山ねずみさんは、そぉ~おっと!南天の木の大群さんの中におじゃましました。
少し奥に入ると、南天の木の大群さん達の間をぬうように、射し込む太陽の光を反射して、何かがキラキラ輝いていました。
「なんて、綺麗なんだろおぉ♪」
山ねずみさんは、気を取られ…、気になって…♪
キラキラさんの正体が知りたくて♪ドンドン近づいて行きました。
山ねずみさんが、キラキラさんの真後ろに近づくと、キラキラさんが振り返りました。
「うわぁ♪可愛いぃぃ。。。綺麗ぃぃ」
山ねずみさんは目をパチクリとして、ただ、ただ、口をポカンと開けたまま見つめていました。
そこには、長ぁ~い、長ぁ~い♪まつ毛の、身体がキラキラ七色に光る、小っちゃくて♪可愛い♪可愛い、長々まつ毛の七色ヘビさんがいたのです。
「君、ど、どうしたの?」
「私、南の暖かい小さな島にいたの…。でも、小さな箱に入れられて、船に乗せられて、トラックに乗せられて、ゴンって音がしたと思ったら、コロコロ、コロと、ここに落ちてたの。私、どうしょう・・」
「わかった、僕が助けてあげるよ」
山ねずみさんは力いっぱいそう言うと、長々まつ毛の七色ヘビさんを連れて南天の木の大群の中から出て来ました。
暫く二人でお話ししながら歩いていると「ビュー」っと、大きな音がして空から大きな鳥が、長々まつ毛の七色ヘビさん目がけて飛んで来ました。
さぁ!大変。
驚いた山ねずみさんは、長々まつ毛の七色ヘビさんを、お姫様抱っこして大急ぎで逃げました。
山ねずみさんは、長々まつ毛の七色ヘビを抱っこして、あっちへチュウチュウ、こっちへチュウチュウ・・・。
やっとのこと、自分のお家に無事に帰って来ることが出来ました。
「ふう~。危ない、危ない」
「ごめんなさい」
「君が謝ること無いよ。ただ、君がキラキラ綺麗だから、仕方ないよ」
「ありがとう」
パサパサ♪長々まつ毛の七色ヘビさんの長いまつ毛が、瞬きするたびにバサバサ♪バサバサ♪と音がします。
こうして山ねずみさんと、長々まつ毛の七色ヘビさんの二人は、お昼間は危ないからと、真夜中のお散歩や、お話しを楽しみました。
やがて、夏の終わりを告げる風が吹き始めると…。
長々まつ毛の七色ヘビさんは、うつらうつらと眠りだし。
とうとう、どんなに山ねずみさんが話しかけても起きなくなってしまいました。
「どうして、僕が話しかけているのに起きないの?」
何度話しかけても起きない、返事をしない、長々まつ毛の七色ヘビさんに腹を立てた山ねずみさんは、怒って、とってもひどい言葉を、長々まつ毛の七色ヘビさんに言ってしまいました。
(ポッン、ポッン・・・、ポツポツ、ポッポポ。ポッン、あれれぇ!!長々まつ毛の先に、何かの実がなりだしました…よ!?)
山ねずみさんが、ひどい言葉を言うたびに、眠っている長々まつ毛の七色ヘビさんのまつ毛の先になりだした実はドンドン大きくなって・・・。
しまいには、上を向いていた長々まつ毛は、プヨプヨ、ヤワヤワの実の重さでか、すっかり下を向いて垂れ下がっていました。
ようやく、「なんだろう?」と思った山ねずみさんは、その実の一つに手を触れました。
<パチン>、と音がして!プヨプヨ、ヤワヤワの薄い水色の実は、山ねずみさんの顔を濡らしました。
それは・・・、
しょっぱくて、にがくって、悲しくって、せつない、『涙の実』だったのです。
山ねずみさんは、何だかとっても悲しくなって、真夜中の森を、ただ・・ただ・・歩きました。
・・・グスン、グスンと泣きながら・・・トボトボ・・・ただ歩きました。
「ホ~、ホ~、山ねずみさん。どうしたんだい?」
「ホ~、ホ~なんで泣いているんだい?」
フクロウさん達が心配して声をかけてくれました。
山ねずみさんは、長々まつ毛の七色ヘビさんが起きてくれないこと、それを怒ってひどい言葉をいったこと。
そしたら、せつない『涙の実』が出来て、悲しくて、悲しくて、泣いてしまったことを話しました。
「ホ~、ホ~。ヘビさんが寒い冬、冬眠するのは当たり前だよ!」
「あっ・・!・・!」
「ホ~、ホ~。長々まつ毛の七色ヘビさんは、暖かい島から来たんだろぉ?、だったら他のヘビさんより早く眠って、遅く起きるんだよ。きっと、ホ~ホ~!」
「本当だね!!僕、長々まつ毛の七色ヘビさんが、あんまり綺麗だから、冬になると冬眠するヘビさんの一族だってことをすっかり忘れてたよ。どうしょう、涙の実。どうしょう、フクロウさん」
「うう~ん。ホ~ホ~、うう~ん」
フクロウさん達が一生懸命に考えてくれます。
山ねずみさんも一生懸命に考えます。
「そうだ!ホ~、反対をやればいいんだ。ホ~♪」
「反対???」山ねずみさんが聞き返します。
「ひどい言葉でホ~、涙の実が出来たならホ~。優しい言葉でホ~、涙の実は消えるかもホ~ホ~♪」
「あぁ~♪そうかもしれない♪、僕やってみる。ありがとう、フクロウさん♪」
それから、毎日、毎日、山ねずみさんは長々まつ毛の七色ヘビさんに話しかけました。
君がどんなに綺麗か、綺麗すぎてヘビさんの一族だと、冬眠して寝てしまうのだと言うことを忘れて、ひどい言葉を言ってしまい、ごめんなさい・・・と。
本当は、君といろんなお話がしたいのだと優しい言葉で、何度も♪何度も♪話しかけました。
するとどうでしょう!
まつ毛が垂れだがるくらい大きかった涙の実は、だんだん、だんだん、小さくなって…。
だんだん、だんだん、消えてしまいました。
でも、まだ、まつ毛は垂れ下がったままです。
「フクロウさん、フクロウさん。涙の実は消えたけど、まつ毛がぁ~、垂れたーーー、まんまぁ、なんだぁ~ぁ~」
山ねずみさんは、そう言うとオイオイと子供みたいに大泣きしだしました。
「大丈夫だよホ~♪今度は、毎日、毎日、楽しいお話をしてあげるといいよホ~」
「わかった!!」
山ねずみさんは大急ぎで帰りました。
それから毎日、毎日、山ねずみさんは出かけた先での楽しいお話を忘れないように、大きな声で練習しながら歩いて、(だって、走って帰ると、忘れちゃうかも知れないから…。)
お家に帰ると、毎日、毎日、スヤスヤ眠る長々まつ毛の七色ヘビさんに、楽しく、ときには笑い転げながら♪お話ししてあげました。
今日も♪大きな声で練習しながら歩いていると、山ねずみさんを呼ぶ声がします。
小さな…、ヘビイチゴさん達です。
「山ねずみさん、山ねずみさん、いつも楽しいお話をありがとう。もしよかったら、山ねずみさんの楽しいお話を聞いて、元気に育った僕達の実を、七色ヘビさんに食べさせてあげて」
「ありがとう」
山ねずみさんは、お礼を言って両手いっぱいのヘビイチゴを持って落とさないように、そぉ~っと♪そぉ~っと♪歩いて帰りました。
お家い帰ると長々まつ毛の七色ヘビさんが、くるんと上を向いたバサバサまつ毛で、にっこり笑って、「おはよう♪」と言いました。
山ねずみさんも「おはよう♪」とおこたえして…。
二人で美味しいヘビイチゴを食べてから、仲良く並んでねぇ。
お外に出ました。
そうしたらね、
そよそよと優しくて、暖かい春の風が静かに森の夜を包み込んでいましたとさぁ。
おしまい。
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