第7話 たまひろ君と、ぬいぐるみの足長カッパさんの脱出大作戦
今朝もぬいぐるみの足長カッパさんは、やっと上手に歩けるようになったばかりの赤ちゃん。
驚くとひし形開きのヒヨコさんの口になる、前髪がヒヨコさんの頭みたいにツンツン立った赤ちゃん。足長カッパさんが『たまひろ君』と呼ぶ赤ちゃんの背中に、足長カッパさんはおんぶされていました。
「今日もやるのか?」
足長カッパさんが、たまひよ君に聞きます。
「ぶう~(ヤルヨ)」とたまひろ君はこたえます。
そしてたまひよ君は、おもちゃ箱から黄色いスコップと、取っ手が赤い色の黄色いバケツを取り出し、それぞれを手に持って、パッンパッンのほぉっぺに邪魔されて、あんまり大きく開かない細~いお目々で柱の陰から、そぉ~っとリビングの方を覗き込みました。
ママとお祖母ちゃんは、楽しそうにお話ししています。
「行けるか?」と足長カッパさん。
「ぶう~(イケル)」と返事するたまひろ君。
「どうでもいいけど、俺の足が床をすってるぞぉ!おい、踏むなよ!」とちょっと怒ったようにいう足長カッパさん。
「ぶう~(フマナイ)」と冷たい返事をするたまひろ君。
玄関に出るドアに向かって、たまひろ君は歩き出しました。
そして、リビングから廊下に出るドアの前のキッチン前に来ると、たまひろ君は立ち止まります。
「おい!寄り道するなよ!」と、足長カッパさんが小さな声でたまひろ君に注意します。
「・・・・・・・・。」
「するのかよォ?!」
足長カッパさんの言葉は聞こえなかった事にして、たまひろ君はキッチンの中にドンドン入って行っていくと食洗機さんの前でピッタリと止まりました。
「またそこかよぉ!」
足長カッパさんは、あきれたように言いました。
でも、たまひろ君は、ガアガア~、ゴオゴオ~、シュウゥゥ~と音がする食洗機さんの中がどうしても見たくて、見たくてしかたがないのです。
だって、不思議でしょう?♪?
食洗機さんの中に入るまでは、お皿のうえには卵色のマヨネーズさんや、真っ赤なケチャプさんがいたのに、飲んでも、飲んでもコップの底にいる真っ白なミルクさんもいたのに…。
食洗機さんから出てきたら?あらぁ、ビックリ!!
皆、いなくなってる。
皆、どこへいっちゃたんだろう?
本当に、誰ぁ~れもいなくなってるんだもん!!
お皿もコップも…、ピッカピカのツルツルになって、とっても綺麗になっているんだもん。
とっても不思議でしょう?
たまひろ君は食洗機さんの前にピッタリと立つと、右を見て、左を見て、おしまいには上を見ようとしてピョンピョンと跳ねだしました。
「あぁ~!跳ねるなぁ~!ママとお祖母ちゃんに見つかるぞぉ!!」と焦った足長カッパさんが叫びます。
「ぶう~(ハネテナイ)」と、たまひろ君。
「嘘つけぇ!!」
「・・・・・・・・・・。」
無言のたまひろ君は、クルリと身体を回してドアの方に歩き出しました。
「はぁ~、どうでもいいけどなぁ。たまひろ、寄り道はするな、寄り道は!」とたまひろ君に厳重注意をする足長カッパさん。
でも、廊下に出たたまひろ君の目には開いているトイレのドアが見えました。
「こらぁ~!!今、言っただろぉ~、寄り道はするなってぇ~」と言う足長カッパさんの声を、たまひろ君は気のせいだと思うことにしました。
だって、だってだって…♪
トイレには、
足長カッパさんは、…ガックリ…と…肩をおとしました。
たまひろ君が開いたドアの隙間からトイレの中を覗き込むと・・・、しずかです。
「ほら、見ろ!渦巻き♪まきまきさんは留守だ♪」と嬉しそうにいう足長カッパさん。
「ぶう~(ソンナコトナイ)」とたまひろ君。
「や、やめろぉ~、俺が、渦巻き♪まきまきさんに連れて行かれて、流されたらどうするんだぁ~」
「ぶう~(サガシテ)」
ゴホゴホ、足長カッパさんは、危うくトイレに流されるところでした。
「だいたい、たまひよぉ・・・ゴホゴホ・・・お前は・・・ゴホゴホ・・どうして・・スコップとバケツなんだよぉゴホゴホ」
「ぶう~(スキダカラ)」
「そうか・・・ゴホゴホ・・好きなら仕方ない・・・ゴホゴホ・・・持つの忘れるなよ・・ゴホゴホ」
たまひよ君は、トイレの前に放り投げたスコップとバケツを素早く拾って、玄関へ向かってヨチヨチと走り出しました。
「走るなぁ~!たまひよ。また頭から落ちるぞ。靴だ!靴。まずは、靴を履かないとなぁ。たまひよ♪」
「ぶう~(シッテル)」
「じゃあ!なんで靴が。こんにちはじゃなくて、さようなら!?で履いてるんだよぉ!」
「・・・・・・・・・。」
「わかった、わかった。もお、靴が、こんにちは…でも、さようならでもいい。難関は、このエベレストの黒い玄関ドアだ!!違うか!!たまひよ!!」
「ぶう~(ワカッテル)」
「旗は、ハンカチは持ったか?たまひよ♪エベレストを越えたら、俺たちの勇気を讃えるハンカチを♪♪」」
「ぶう~(モッタ♪)」
たまひよ君は、右のポケットに入っている黄色いヒヨコが付いた、お祖母ちゃんに買って貰ったハンカチを確かめました。
「よし!行くぞ!!」
足長カッパさんの声に力が入ります。
「ぶう~(イクジョ!)」
たまひよ君が一歩を踏み出すと、がチャンとドアが開いて眩しい外の光が♪差し込みました。
すげえ!すごいぞ。
たまひよ♪
俺たちはいよいよ♪パパと見たテレビの・・・、あのエベレストの頂上に旗を立てた英雄に、ヒーローになるんだ♪
たまひよ♪
たまひよ君の背中にくくられてぇ、はや何日。
やっとこの日が来たのかと・・・。
足長カッパさんは、感動で目が、『うるうる』してきました。
玄関ドアが完全に開いた先には、出張から帰って来たパパがケーキの箱を持って立っていました。
えっ・・・パパ・・・ケーキ・・・の箱????
足長カッパさんは考えがまとまりません。
気が付くと、たまひよ君が固まって動きません。
あぁ~!今、たまひよの顔が、目が、キラキラお星さまになって、口はヒヨコのひし形開き、前髪は・・きっ・・と、つんつん、つんだぁー!!
見てろぉ、スコップとバケツをすてるぞぉーーー。
ああ~!!捨てたあぁ。。。
なんでこんな大事な時に、ケーキの箱なんか見せるんだぁー??パパぁ~
今、たまひよの頭は、ケーキに、ケーキに…。
たまひよの頭は、ケーキに・・・、ケッ・・・。
ケーキになってるよぉーーー、
・・・・ガクッ・・・・
「ぶ♪ぶ♪ぶう~(ケーキ、ケーキ、パパ、ケーキ♪パパ♪)」
ケーキの箱にピョンピョン跳ねて飛びつこうとした、たまひよ君を、パパが小脇に抱えてリビングに向かいます。
こうして、
たまひよ君と、ぬいぐるみの足長カッパさんの脱出大作戦は・・・、
今日も目出度く、脱出大失敗に終わりましたとさぁ、チャンチャン。
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