第25話「陰陽道と式神」
「あ、あの、どうもありがとうございます。私の荷物まで持っていただいてしまって。」
「いいんだいいんだ。私が見ていられなかっただけだから。」
ミナのお礼に、両手に荷物を持った恰幅の良い
ミナが
それは彼女のものではなかったが、「西宮ヒル」が両手に持っていた紙袋だった。
ミナはオークにお礼を言ってその荷物を受け取ったのだが、華奢な彼女にとって、背中の自分のリュックに加えてヒルの荷物を両手に持ち、なおかつ式神を使ってヒルの居場所を特定するというのは困難なことであった。
ミナはそれでも始め、オークの心配に対して気丈に振る舞っていたのだが、結局は彼の親切な申し出に甘え、今は彼にヒルの荷物だけでなく、自分の荷物まで持ってもらっていた。
おかげで彼女は身軽に動けるようになり、ヒルの捜索に集中できるようになったのだ。
「・・・
オークは空を飛ぶ
「そんなことまでわかるんですか!?」
ミナにとっては、目の前のオークが空を飛ぶフクロウをミナの式神だと見抜いたことだけでも驚きだったが、あまつさえ式神の種類まで見破られるとは驚愕だった。
「うん、こう見えて陰陽道には多少の心得があってね。ミナちゃんと言ったかな?とても賢明な判断だね。
ミナはオークのオヤジギャグにも笑わずに、真面目に真剣な顔で聞き入っていた。
少し寂しげにオークは続ける。
「『
オークは感心した笑みをミナに向けた。
「それに君の式神は
「きょっ、恐縮です・・・。」
ミナは顔を赤くして恐縮した。
陰陽道の魔法は––––––––。
陰陽道の魔法は、他の
そしてこの式は、「
五行とは「
また
十干とは、この「五行」と「陰陽」を組み合わせた10種類の魔法(式)の系統のことだ。
具体的には、
例えば、今オークさんが説明していた「
この「癸」というのは「
もし水属性の陽性質の式系統ならば、十干は「
火属性の陽性質ならば「
そして陰陽道における式(魔法)は、すべてこの「十干」で分類することができる。
それは「式神」と呼ばれる陰陽道の魔法においても、例外ではない。
式神は、簡単に言えば、
ただ「人工知能」というものは定義が意外にも難しく、人によって解釈が分かれてしまうことも多い。(ちょっと昔までは、漢字の変換やメッセージの予測変換なども人工知能とみなされていたそうだけど、私を含めて今ではピンとこない人も多いと思う。)
魔法庁が発表しているところの「式神」の定義は、「魔法使いを管理者として、管理者の霊力の一部が譲渡された
・・・正直私も、最初読んだ時にはわけがわからなかった。
とても噛み砕いて説明すると、「「
十二支というのは、
そして式神というのはすべてこの十二支の動物たちの形をとる。
またもちろん式神は、その名の通り「式(陰陽道の魔法)」なので、
そしてこの十干と十二支を組み合わせた「式神の種類」が、魔法庁の式神の説明にある「
私の式神「
ただし、「干支」つまり「式神の種類」には、ちょっとだけ注意がある。
実は、十干に「
具体的には、十二支のうち陽性なのは「
そして干支では、「陽性の動物には陽性の十干」、「陰性の動物には陰性の十干」といった感じに、同じ性質の十二支と十干でないと組み合わせることができない。(だから式神の種類数は、12×10=120ではなく、6×5×2=60種類だ。)
例えば、私の
・・・う〜ん、うまく復習できたかな?図で示せればもっとわかりやすく説明できると思うのだけど・・・。
「・・・やはりこの分野は
「えっ!私の使ってる儀式言語までわかっちゃうんですか?」
「うん、やはり式神が綺麗だからね。蝦夷流の陰陽師は「
「あははは、よくご存知なんですね。・・・じ、実は私、オークさんが説明してくださった分析じゃなくて、ただ単に私が唯一まともに組めた式神が癸酉だっただけなんです・・・」
「はははは、そうだったのか。いやなに気にする必要はないよ。どうあれ上手な式神なんだから。」
「きょっ、恐縮です・・・・」
二人が雑談をしていると、ミナの指輪から通知音が響いた。
どうやらミナの式神が、「西宮ヒル」と思しき魔法使いを見つけたらしい。
ミナは、
そのまぶたの上に指輪を当てた。
すると、ミナの左目のまぶたの裏には
ミナはそれを確認すると、小さく悲鳴のようなものを上げた。
「どうしたんだい?お友達は見つかったのかい?」心配そうな声でオークがミナに尋ねた。
「いいい急ぎましょうっ!!オークさん!」ミナは質問に答えず、テンパった風にオークを急かした。
「ど、どうしたというんだい?」
「ちち血が、、、、怪我をしてるんですぅ〜!!」
「ななんだってッ!?それは急がなくてはッ!」
オークは、ミナの情報量の少ない返事でも素早く状況を察し、巨体を揺らして走り出した。
しかしただ、運動音痴で華奢なミナとしても、インテリで恰幅の良いオークとしても、急ぐのと走るのは苦手な部類の活動だった。
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