✩ようそこ新しい世界へ✩
✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼
少しだけ、お付き合い願いましょう。
とある少年の誕生と、別れについて
きっと少年が永遠に知る事もない物語を
彼女達が少年との儚い時の中で抱(いだ)いたその想いに
ほんの少しだけ耳を傾けて頂けないだろうか。
✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼
✰母親とイザベラの想い、あるいは懺悔(ざんげ)✰
ようこそ新しい世界へ
(ようこそ新しいお家へ)
生まれた時すぐに気がついたの
(来た時からすぐに気がついたわ)
あぁこの子は素晴らしい魔術師になるって
(この子は素晴らしい魔術師になると)
そうしてさらに気づくの
(そうしてさらに気がついたわ)
来年にはこの子と離ればなれになるんだって…
(いつかこの子に名前を授ける事が出来るんだって)
私とパパと一文字づつを名前につけたの
(この子に格好良い名前をつけてあげよう)
ずっと悪魔から貴方を守れるように
(きっと一流の魔術師になるだろうから)
いつも貴方のそばに寄り添えるようにって
(その名前がいつか世界中に響き渡るのだから)
貴方の本当の名前は私とパパが預かっているから
(だからこの子の名前は大切に考えてあげよう)
だから安心してね
(けれど想いは叶わない)
貴方が生まれてから景色が鮮やかに見えたの
(奴等が現れて景色が一転してしまった)
パパに似て綺麗な白い髪だから
(醜い角を持ち)
私に似て、綺麗な黒い瞳だから
(畏怖する紅い眼を持って)
ーーきっと女の子が放っておかないわ
ーー(【眠りの森】に恐怖を振りまいた)
パパに似てきっと朝は弱いだろうから毎朝起こしてあげるの
(この子はとっても勇敢だったわ)
そうして、ご飯を作ってあげると貴方は言うの
(きっと私の知らない両親に似ているのね)
ーー美味しいよお母さん
ーー(イザベラ師匠‼︎)
って言って笑うのね
(って言って心配そうに見るの)
だからきっと嫉妬するのかもしれないわ
(だから思いっきり抱きしめてあげたの)
この子を育てていく名前も知らない誰かに
(この子の命を狙う悪魔(まじんぞく)から守るように)
根掘り葉掘り聞いてみたい
(右も左も見渡せば沢山の悪魔(まじんぞく)がいた)
私よりこの子を知っていく名前も知らない誰かに
(この子には指一本触れさせてなんてあげないわ)
ーーどんな物語が好きなの?
ーー(魔国神話の物語が好きだったわね)
ーー好きな食べ物は?
ーー(魚のアルミホイル焼きが好きだったわね)
ーー嫌いな食べ物は?
ーー(茄子(なす)だけは嫌いだったわね)
って
(だからごめんなさい)
これから貴方の瞳は素晴らしい世界を、
(この子の綺麗な瞳に素晴らしくも)
美しいこの世界を映していくの
(美しくもない世界を映してしまう事を)
ーーようこそ生まれてくれて
ーー(ようこそ私の元へ)
ーーようこそ新しい世界へ
ーー(ようこそ新しいお家へ)
ありがとう神様
(ありがとう勇敢な子)
こんな可愛い天使を授(さず)けてくれて
(こんな私の元に来てくれて)
ごめんなさい、私達の可愛い愛(いと)しい子
(ごめんなさい、この子の名前も知らない両親様)
貴方の人生に寄り添ってあげられなくて
(この子の人生に約束の時まで寄り添えずに)
ーーいつも貴方を想っているわ
ーー(いつもこの子を想っています)
ーー《サヨナラ愛しい子》
✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼
ーーこうして、1歳になる少年は両親と別れる
ーー(こうして、11歳になる少年は師匠と別れる)
✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼✻✼
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます