✬ドラゴン寮その✬

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「結局魔獣の大群や、あの悪魔の原因はなんだったのかしら」

とアリアナは、コーヒーを啜りながらフロストを見る。

「さぁ、なんでも王都が絡んでるってギルドで噂は聞いたけど本当の所は分からんね」

とフロストは、魔術新聞(リードル)に目を通しながら向かいに座るアリアナへ返答する。

そんな事より、とフロストは前置きして、

「いつまで僕の部屋にいるのさ‼︎」

バサッと魔術新聞(リードル)を畳むと、かれこれ2時間はフロストの部屋にいるアリアナにむけて言った。


「良いじゃない別に、何か見られたくない物でもあるのかしら?」

と、アリアナはあたりをキョロキョロと見渡す。

やめてくれよ、とフロストはやれやれと言った具合に呟くと期待してるような物は無いと、付け加えた。


「だって1人で部屋にいてもつまんないし」

と、アリアナは頬を膨らませて言うと、それにと続けて、

「貴方の部屋ってすっごい綺麗で快適なんですもの」

と、笑いながら言っていた。


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魔獣の大群が押し寄せたあの日から、既に2日立っていた。

あの後、魔獣の殲滅を終え南側の手伝いに行ったのだが、既に南側も殲滅を終えていたらしい。とはいえ、大地は轟々と業火で埋め尽くされていて消化活動を手伝う羽目になったのだ。

だが、フロストにとっては悪い事ばかりではなかった。

数ヶ月ぶりの師匠との再会で、次の日には帰らなければならないと言って久しぶりに戦闘訓練を受けたのだが、相も変わらずキレッキレのスピードで脇腹に何発も打ち込まれ、泥塗(どろまみ)れになったのだから、悪い事ばかりでは…あれ?悪い事だな…

訂正しよう。

フロストにとっては悪い事ばかりだった。


そして物語は、ドラゴン寮のフロストの部屋へと戻る。


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コンコンッと部屋の扉を乾いた音が響く。

「どーぞー空いてるよー」

と、フロストは返事をするとガチャっと音を立て扉が開く。

「あ、こんな所にアリアリおったとね」

と、顔を覗かせたのはレゾナである。

いつもの頭の上に束ねていた黒いお団子はどこえやら、髪はストンと胸元まで綺麗に落ちていた。

「2人ともこんな所でなんしよーと?」

と、レゾナはえへへっと笑いながら両手をワシワシしていた。

「雑談よ、その手を止めなさい」

と、アリアナは顔を赤くして言う。

「おいこら、こんな所ってなんだよ‼︎僕の部屋だよ‼︎」

と、この子は何を言ってるんだと言った具合に答える。


レゾナはテヘヘっと笑いながら私もお話し参加して良(よ)か?と尋ねながらアリアナの横に座り、ピクシーズに命令すると数分もしない内にピクシー達がコーヒーを運んできた。

「雑談ならヤナギやルーナがいるだろ」

あいつら何してるんだと、フロストが呆れた口調で言うと、

「ヤナギダ君は部屋にこもって編み物してたから邪魔しちゃいけんやん?それにルーちゃんは視聴覚室でずっと歌の練習しよったもん」

やけんアリアリ探してたらココに辿りついたとよ、とレゾナは答えた。

成る程ね、まぁ適当にくつろいでいけば、とフロストは週刊誌を手に取ると目を落とした。

「そういえば貴女のお師匠様って学校長なんでしょ?」

普段どんな感じなの?と、アリアナはレゾナに聞く。

「普段はすっごい大人しいばい」

それに優しいの、と笑顔でレゾナは答える。

そうなんだ、と相槌を打つとフロストにマスカーティお師匠様って前からあんなに気さくな感じなの?と質問をした。

フロストは週刊誌から目をあげると、

「昔は知らないけど僕が11歳の時に弟子入りした時からあんな感じだよ」

と、フロストは答える。

「え?11歳で弟子入りってどう言う事なん?」

と、レゾナはフロストに聞くと、

ん?と少し首を傾げ、あぁそうかと納得しながらフロストは答える。

「僕の前の師匠亡くなったんだよ、その後ピエロ師匠に弟子入りしたんよね」

と、少し寂しそうに答えた。

アリアナは口元を手で押さえ、レゾナは申し訳なさそうに、ごめんなさいと呟いた。

「もぉ過去の事だよ、前の師匠イザベラって名前だったんだ」

と、少しだけ過去の話しを始めた。

まるで誰かにイザベラの事を、または自身の後悔を、知って欲しい聞いて欲しいと言った具合に。


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