✬魔獣の大群その✬
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「お呼びしたかね?Ms.バレンティーン」
と頭に、長い鍔(つば)の帽子をかぶった男は、魔術学校教員のヘレナ=バレンティーンに尋ねる。
「えぇ、お呼びしましたわMr.ブルフ」
と、ヘレナは答えるが、その両手は今も空に向け伸ばしている。
ここは、帝都魔術学校よりはるか西側【見守りの塔】最上階である。
「お呼びして申し訳ありませんわ、貴方も忙しいでしょうけれど少しお願いしたい事がありますの」
と、言いながら魔術学校教員ブルフ=ダーティを見る。
「ふむ、その表情ではあまりよろしくない事態ですな?Ms.バレンティーン」
と、左手に持つ髑髏(ドクロ)モチーフのステッキを、カンッカンッと床に打ち付けながら言った。
えぇ、そうですわ、と前置きして、
「先程、とてつもなく大きな魔術の行使を東側で観測しましたの。ですから」
と、続けてMr.ブルフ貴方をお呼びしましたわ。と、ブルフに言う。
「成る程成る程、東側と言えば黄金世代がいるので彼等では?」
と、ブルフは言うがヘレナは、首を左右に振ると、
「いいえ、アレは彼等ではありませんの」
彼等の波導はよく覚えているのですから、とつい最近【偉大成(グランド)る跡地(ゼロ)】での彼等の魔術について言った。
「成る程成る程、Ms.バレンティーン、貴女の魔術察知能力はズバ抜けてますからな」
信じますとも、と言いながらブルフはステッキをクルクルと回していた。
「見ての通り、私(わたくし)結界維持の為手が離せませんので、彼等を助けにお願い致しますわ、Mr.ブルフ」
と、言うと目を瞑りヘレナはもう要件は無いとはがかりに結界に集中する。
それを見やると、ブルフはマントを翻(ひるがえ)し、その場から姿を消した。
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所変わって東側へ戻る。
「おい‼︎これ魔術全然効いて無いんじゃねぇのか‼︎」
とヤナギは、今も全力で魔術を行使しながら誰に言ったのか叫ぶ。
「間違いなく全然効いて無いが、少なくともヤツは動きを止めている‼︎喋ってる暇あったらもっと本気出していんだぞヤナギ‼︎」
と、フロストは返答していたが、
「既に本気も本気の全力だっつんだよ‼︎この白髪の嫌味野郎‼︎」
てめぇこそ本気でやれや‼︎と、ヤナギは文句を言いながら歯を食いしばっていた。
「返還の呪文は、流石に1人じゃ時間かかるわ‼︎5人でやったらもっと早く出来るのに‼︎」
と、アリアナは攻撃の手を止める事なく、今も1人黙々と呪文を唱えているレゾナを見る。
「そんな事やってたらぁ〜あの悪魔動き出してルンちゃん達一瞬で昇天しちゃうと思うんだぁ〜」
と、ルーナは言うとフゥーーと、肺にたまった息を吐き、もう一度大きく吸い込むと、魔導式マイクを握り締め攻撃を再開する。
(あぁ、くそぉ‼︎1人でコイツを止めれるような人が入れば良いのに‼︎)
と、フロストは道化師の顔をした赤髪の男を思い浮かべながら思っていた。
すると、
「呼んだかね?」
と、黒く長い鍔(つば)の帽子を被った男が真横に立っていた。
「ふむふむ、成る程これはまた難儀な物だ」
と、男はクルクルとステッキを回しながらフロストの顔を見ると、
「君達は返還の呪文、使えるね?」
と、言ったのだった。
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《召喚用魔方陣(サモンペンタクル)》
文字通り、召喚用の魔方陣である。
本来は、召喚用魔方陣(サモンペンタクル)単一だけの使用はせず、守護魔方陣(プロテクトペンタクル)と、セットとして用いる。
✭召喚用魔方陣(サモンペンタクル)は、内側の物を外側に出さないように《封じる鎖(かせ)》で縛る。
✭守護魔方陣(プロテクトペンタクル)は、内側の物を外側から守るように結界として用いる。
つまり、召喚用魔方陣(サモンペンタクル)は、外側からの侵入は許すが、魔方陣(ペンタクル)が起動している限りまず出られない。
とはいえ、魔術師にとっては周知の事実だ。
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