✬入学式展ドラゴン現る✬

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ドラゴン寮、その外見は美しいレンガ造りの屋敷だ。

だが美しい外見とは裏腹に、建物内部は改造に改造を施されていた。


ドラゴン寮の庭には、レゾナによって、様々な植物を栽培していた。

談話室の隅にある階段を下りると、地下室(もともと地下室は存在していなかった)があり、召喚専用部屋と、アリアナの魔道具研究室がある。

地下室のそれぞれの扉には、部外者が勝手に立ち入らない様に、【永久零度の呪い】がフロストによって施されていた。

3階の視聴覚室は、ルーナによってステージが造られていて、音響機器や魔楽器が所狭しと置いてある。

ヤナギは何をしているかって?

そんなの部屋にこもって趣味の手芸に精を出しているに決まっている。


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帝都魔術学校、ここはこれまで多くの魔術師を輩出している。

だが残念ながら、毎年卒業出来るのは半数にも満たない。

ギルドでの依頼を受け帰ってこない者や、魔術師としての力を失った者、悪魔に命を奪われる者と、様々だ。


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「やっぱり何度見てもでっけー城だなぁ」

と、ヤナギは片手にハンバーガーを持って食べながら言った。

貴方よくこんな朝っぱらから、そんな物食べられるわねと、アリアナから軽口を叩かれる。

「この制服可愛いよねー、ルンちゃん似合うでしょ?」

と、ルーナは隣のフロストに尋ねるが

「ん?あぁ可愛い可愛い。そんな事よりさ、レゾナってずっとあそこに住んでたの?」

と、さもどうでも良さそうに返答すると、レゾナに尋ねる。

「んー住んどったのはイデア校長の家だよ?まぁほとんど家にいないから学校の校長室でほとんど勉強しとったんばってんね」

とレゾナは答える。


彼等5人が集まって行動していると、街の住人はヒソヒソと噂話しを始めたり、若い魔術師達は、

「あぁヤナギ君素敵だわ」

「ルーナちゃんか、可愛い」

「俺、いつかレゾナさんと結婚するんだ」

「ふっ甘いな、俺は来年ドラゴン目指してドラゴン寮でハッピーライフ送るぜ」

などと話していた。


入学式の会場に着くと、あたりは既にガヤガヤと煩い。

ステージには学校長を始め、著名人が数多く横並びに座っていた。


左端にも同じ様に、有名人達や商人、そして中には、隣の王都の学校長などの姿まである。

本来、魔術学校の入学式典は世界同時に行われるのだが、帝都は1週間遅れて入学式典が行われる事となった訳で、一目見ようと各国から集まっているのだ。


そして、式典は始まる。


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パチパチパチパチと、拍手が起こる。


今しがた、スザク代表のアルージュ=オブラディアより代表挨拶が終わったのだ。


そして、次はドラゴンである。


「おいおい、本気でやんだな?」

「今更何を言ってるのよ、やるんでしょ?」

「早くしよぅよぉ」

「ホラッさっさと準備しろよ」

「もぉ始めてよか?」

と、ヒソヒソ喋る黄金世代の面々に皆注目していた。


「じゃぁ、始めるばーい」

えいっ‼︎と、可愛らしい声を出しながらレゾナが煙幕の出る玉を下に叩きつける。

そして、5人は会場の入り口で等間隔に横並びに並ぶといつ着替えたのか、制服の上から黒いローブを羽織り、フードを頭に被り、顔には狐のお面をして、手にはこれまた、黒い杖を持っていた。


煙幕がはれ、入り口に並ぶ5人の姿を見やると魔術師達は「ほぉ」や「ふふふっ」

と、笑っていた。


その姿は、皆が知っている、魔国神話の昔話しに登場する7人の魔導師と同じ姿である。


そして、5人は同時に、

ドンッドンッドンッドンッと、

杖を床に突き始める。

すると5人を起点に、魔術のうねりとともに5匹の龍が姿を表す。

魔術で出来た5匹の巨大な龍は、それぞれ会場をぐるぐると旋回すると、同時に空に向かって飛んでいき、遥か上空でその姿を、

ドパァァァァァァアンと、花火にかえた。


そして5人は颯爽(さっそう)と式典を後にした。


前代未聞の事に、参列していた各国の有名人達は一瞬固まるが、

新入生の若い魔術師達や、2.3回生の生徒はワァァァァァァァアッと雄たけびを上げながら拍手をしているのを見て、同じ様に拍手を始める。


「ふふふっもぉ式典滅茶苦茶じゃない。私の苦労を思い知って欲しい物だわ」

と、イデアは言いながら未だに鳴り止まない歓声を見て、ハァとため息をついていた。

教員達も、アワアワッと取り乱したり頭を抱えたりと、様々だ。


「本当、僕の弟子はなんばしよっとね。イデアのとこの弟子も一緒になってから」

と、笑いながら呟いていたのは、

参列者の中にこっそりいた、ピエロである。


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