✬己の守りたい誇り✬

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まだまだ、歓声の鳴り止まない【偉大成(グランド)る跡地(ゼロ)】


そこに、先程の若き魔術師の勇姿を眺めていた女性の姿がある。

その頬にはツツッと綺麗な涙が流れていた。

「なんだいイデア校長」

泣いてんのかい?と聞く女性は赤髪の女性アルシュである。

「泣いてないわよアルシュ」

とイデアは、手の平(ひら)で頬の涙を拭う。

それを見ながら、

「素直じゃないねぇ、ピエロにも見せてあげたかった?」

とアルシュはイデアに聞く。

そうねぇ、と言いながら

でも、と続け

「ピエロの事だから何らかの方法で」

見てたんじゃないかしら、と言うと、

ふふふっと笑っていた。


(きっと見てたわよ)

(だって私たちの想いは、こうして未来にしっかり受け継がれているんだから)

と、今この場にいないピエロと、もう1人の人物を想いながら心の中で呟く。


さて、こうしちゃいられないわね。


と、おもむろに両手をパンパンッと叩く。


すると周りの音、一切を消した。


イデアの能力:【付与型】凪のさえずりだ。


そして、喋りだす。


《今この場にいる魔術学校の生徒並びに教員、そして入学式を控える生徒よ、よく聞け‼︎》


《先程の若き魔術師達の勇姿を見たか》


《あの魔術の奔流を見たか》


《魔術はただ悪魔を従えるための技術ではない‼︎》


《ただただ人を傷つけるためでもない‼︎》


《魔術とは守る為の力だ‼︎》


《今隣で感動を分かちあった友達‼︎》


《愛する家族‼︎》


《そして》


《己の誇り‼︎》


《それを守る為の力だ‼︎》


《己(おの)が信念(しんねん)を貫け‼︎》


《ここから始めよ‼︎》


《守る為の魔術を‼︎》


と、既に能力は解除していたが皆、耳を傾けている。


《これより‼︎学校長として命令する‼︎》


そして一度ぐっと目を閉じ、そして開くと言った。


《ドラゴンを目指せ‼︎》


すると、たちまち


ワアアアァァァァァァァァァァァァア‼︎


と、大歓声が鳴り響く‼︎


それを見渡しながらイデアは、


「もぉ迷わないわ」

と、誰に向け言ったのか、空に向け呟いた。



その後、各教員から、入学式を1週間遅らせるとの伝達が、新入生に渡り、

その間に学校でどう過ごして行くのかをしっかり考えるようにと、伝えられる。


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少しだけ昔の話しをしよう。

数十年前、帝都の学び舎にとある3人の天才がいた。

1人は、自分の顔を隠すようにいつもお面をかぶっていた。

1人は、お転婆な女性でその微笑みを見て落ちない男はいないと言われていた。

1人は、自信に満ち溢れていて酷く聡明な青年だった。


彼等が、学び舎で三年目を迎える頃だった。


第二次魔術対戦が起きたのは。


当時は、学び舎を卒業していない生徒の戦闘への参加は認められいなかった。


だが、自信に満ち溢れていた生徒が言った。


僕たちは、誰もが認める天才だ‼︎


きっと力になれるから3人で参加しよう‼︎と


だが、お面をかぶった生徒は言った。


2人が傷つくのは見たくない。


もしかしたら命を落とす事もありえると


2人の生徒の意見は平行線だった。


だから言ったのだ、お転婆な少女は


だったら、魔演舞(リルデリー)で決めたら?と


もともと、3人の戦闘参加に賛成だった教師の中から2人、協力してくれる事になる。


そして、当時はただの広大な土地だった場所でそれは行われた。


己の守りたい誇りをかけて。


勝負の末、自信に満ち溢れていて、聡明な少年に群杯は上がる。


そして3人は、第二次魔術対戦に参加する。


そして半年後、第二次魔術対戦は終戦を迎え、帝都に彼等は帰って来た。


1人を除いて。


一瞬だったらしい。


魔術に呑まれ消えたのは。


何も残っていなかった。


彼がいつも身につけていた《お面》以外は。


誰よりも、2人の無事だけを望んでいた。


彼の望みは、しっかりと果たされた。


2人の心に大きな穴をあけて。


それからだ、自信に満ち溢れていた聡明な青年が《道化師の化粧》をするようになったのは。


人が変わった様に学業と研究に打ち込み


首席で卒業した後


帝都を去ったのだ。


お転婆な女性は、心の穴を埋めるように同じく学業に励み


次席で卒業した後


自分の守りたい、自分以外の誰かの為に


教師を目指す。


以上が、今では【偉大成(グランド)る跡地(ゼロ)】と呼ばれる場所で過去に行われた魔演舞(リルデリー)の事の顛末である。


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