✬これが黄金世代だ✬

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始めに、この2人の魔演舞(リルデリー)を見つけたのは誰だったか。

情報はすぐに、帝都マジョリカ中を駆け巡った。


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初めは、魔方陣(ペンタクル)内のあまりの攻防と、すでに原形をとどめていない大地の有り様に、止めるべきかどうかと考えていた魔術学校の生徒がいた。

意を決して、止めようとする青年を引き止めたのは、この帝都最高責任者であり学校長であるイデア=マスカレードだ。

「近寄るな」

と、今まで学校長から、一度も聞いた事のない声色で言われた生徒は、

驚いた顔で学校長を見やるが、

イデア=マスカレードは、目の前の攻防を静かに眺めていた。


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あれから何日たっただろうか。


部外者は一切邪魔をしてはならない。


何故ならこれは、魔術師同士の誇りをかけた闘いなのだから。


ゴクリと生唾を飲み込み、皆(みな)、静かに両者の攻防を見守っている。


中には、日夜止むことなく繰り広げられる攻防を一瞬足りとも見逃すまいと、5人と同じようにじっと四六時中見守る者もいた。

だが、ほとんどの者は、睡眠の為に1度その場を離れたり、ご飯を食べに離れる者がいたが、

いつの間にか周りには、魔術で出来た観客席やテントが出来ていて、出店や屋台もある有様である。


そんな周りの状況など気にも留めず、ただひたすらに目の前の事に集中する、5人の姿がそこにはあった。


《これが黄金世代ドラゴン‼︎》


《見よ‼︎帝都の魔術師達よ‼︎》


《この様こそ魔術師の真の姿だ‼︎》


と言わんばかりな、5人の姿に中には涙する者も現れる。


あぁ、なんて素晴らしい魔術の波導か。

その練度はまだまだ青く、若い。

しかし若さの裏に力強い波導が込められている。


いつしか報道陣が押し掛け、その一部始終を報道しようとするが、住人や魔術学校生徒、教員に

「魔術師の闘いを冒涜するのか‼︎」

撮るならもっと遠くから静かに撮れ、邪魔だ‼︎と言われていた。


年配の魔術師達は、日夜止むことなく繰り広げられる攻防に数十年前のこの場所で行われた魔演舞(リルデリー)を思い重ね、瞳を濡らしていた。


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闘いはすでに、辰月(たつづき)へと差し掛かっていた。


そして終わりは、唐突に訪れた。


極大の氷がヤナギの頭上に降り注ぎ大地がすでに何千回目かの悲鳴をあげる。


その一撃を受け止めたヤナギは肩で息をしながら握り拳(こぶし)を作るが、足下でピシッと音がし、音のした場所を見やると

「くそぅっ、マジかよ」

と声を発した途端、

パキィィィィィンと弾ける音を立てながら、六角形魔方陣(ペンタクル)が弾け飛ぶ。

「ちくしょうっ」

と、弱々しくヤナギは呟くと真後ろにバタンと倒れこむ。


その様をフロストは見やると、だらんと右手を下ろし、肩で息をするとこちらも真後ろに倒れこむ。


女性陣は3人とも、今だに目をキツく閉じ、呪文を唱え続けていた。

教員達が慌てて3人の女性陣に駆け寄り、肩を揺らして

「終わった‼︎終わったんだよっ‼︎」

もぅ呪文解いて良いのよ‼︎っと涙を流しながら止めていた。


「終わったのね…」

とアリアナは呟くとその場にへたり込む。

「し、しんどかぁ〜、もぅ無理ばい」

とはレゾナだ。

ルーナに至っては、既にその場で爆睡していた。


周りで、大歓声とともに拍手が巻き起こっていた。

中には、すごいっすごいっと言いながら泣き崩れる者もいた。



鳴り止まない大歓声と惜しみない拍手の中フロストは手の平を、天に向けのばすと、

「勝った」

と呟き、ぎゅっと拳(こぶし)を作る。


反対側では、

「ちくしょうっ負けちまったよ」

悔しいなぁと、弱々しく呟き左手で目元を隠しながら泣いているヤナギの姿があった。


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こうして、日間にも及ぶ男同士の闘いは幕を閉じ、この後、当事者5人と見物人、十数人が疲労や栄養失調、魔力枯渇などの理由から魔術病院へと搬送される事となる。


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