✬魔演舞と男同士の熱き戦い✬
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未だ寒さは残るがほんのりと春の訪れを草木が感じ始めていた。
入学式まで1ヶ月を切った現在、兎月(うつき)である。
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ここは帝都の西側、広大な土地が広がっているが草木は一切見当たらない。
数十年も前に、とある3人の生徒と2人の教師によってこの場所は、半径9㍍もの円を描き、何もない禿げた土地となっている。
帝都に住む者達は皆この場所を【偉大成(グランド)る跡地(ゼロ)】と呼ぶ。
「じゃ、正々堂々魔術師の魔演舞(リルデリー)形式に沿って、どちらが上か白黒つけますか」
と言うと、フロストは早速自分の真下にある直径2㍍の丸型魔法陣(ペンタクル)内に六角形魔方陣(ペンタクル)を描きだす。
「は、あったりめぇだ‼︎今日こそどちらが上か白黒つけてやんよ‼︎その真っ白な髪を泥で真っ黒に変えてやっからな‼︎」
とヤナギも早速自分の真下にある直径2㍍の丸型魔法陣(ペンタクル)内に六角形魔方陣(ペンタクル)を描きだす。
その周りでは、せっせとレゾナ、アリアナ、ルーナが男2人を囲むように半径8㍍もある巨大な丸型魔法陣(ペンタクル)内に三角形魔方陣(ペンタクル)を描いていた。
この作業は、魔演舞(リルデリー)を行うために必要な作業なのだが、本来、魔術協会(リンセント)の専門魔術師達が呪文を唱えながら行う作業であるのだが、さすが天才達、魔術学校の生徒でも知り得ない知識にもかかわらず、女性陣3人とも(珍しくルーナも)黙々と作業をこなしている。
知識には酷く貪欲であるらしい。
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✭ここで少し魔演舞(リルデリー)についての説明をする。
魔演舞(リルデリー)は、【付与型】の魔術師同士で行う決闘だ。
魔演舞(リルデリー)は、直径16㍍の巨大な魔方陣(ペンタクル)の中に、更に二つ直径2㍍の小さな魔方陣(ペンタクル)を描く。
小さな魔方陣(ペンタクル)同士は9㍍以上離れていなければならない。
両者はそれぞれの魔方陣(ペンタクル)内に立ち、お互いに向かい合うと攻撃と防御を交互に行う
どちらかの魔方陣(ペンタクル)が壊れるまで、
または、どちらかの魔力が尽きるまで行う。
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そもそも、この2人が魔演舞(リルデリー)を行う事になった発端は、1ヶ月前、虎月(とらづき)にさかのぼる。
最初は、ほんの些細な事からだった。
寮に5人が集まった初日、フロストが荷物を二階に持って上がり、階段に近い部屋を自分の部屋として使う事に決めたのだが、
どうやらヤナギは、その部屋が良かったらしい。
そして口論の末、ジャンケンでフロストが勝ち部屋の所有者は決まった。
その後、事あるごとにフロストへ勝負をけしかけ(大浴場に備えつけられているサウナでどちらが長く耐えれるかなど)今の所63勝1引き分け63敗と、見事に引き分けているのだ。
だったらと、
「魔演舞(リルデリー)で勝負つけたらよかやん」
2人とも【付与型】でしょ?と、レゾナの鶴の一声によって、魔演舞(リルデリー)での勝負に決まったのだった。
ちなみに大浴場での勝負は、
「いい加減風呂から出て来ないと○○○ちょん切るわよ‼︎」
いつまでたっても私達が入れないじゃない、と誰かとは言わないが(彼女の名誉のため)、お叱りを受け引き分けとなったのだ。
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そして話しは、魔演舞(リルデリー)に戻る。
「その魔方陣(ペンタクル)からは一歩も外に出られないから、お得意の神速は見られそうにないね」
と、フロストはヤナギを挑発する。
「は、スピードだけが武器なら【ドラゴン】なんてなってねぇよ」
と、フロストに返答するが
「ええ知ってます」
と素っ気ない返事を返して、フロストは準備運動を始める。
額に青筋を立てながら、ヤナギも準備運動を始める。
「こっちは準備OKよ」
とアリアナは言うと女性陣は魔方陣(ペンタクル)に描かれた三角形のそれぞれの頂点の位置に立つと、両手を前に突き出し呪文を始めた。
巨大な魔方陣(ペンタクル)が力強く輝きだす。
「それじゃ、最初の攻守決めようぜ」
とおもむろに、ポケットからコインを取り出すと、右手の親指でピィンッと空に打ち上げ、パシッと手の甲に受け止める。
「裏」
とそれを見たフロストは言うと、ヤナギは左手をどけ
「俺が最初の攻撃だ」
と言った。
ヤナギは首のネックレスを外し、トップに付けていた小さな布地の袋のような物を手に取ると握り締め、拳を前に突き出していた。
これこそ、ヤナギの能力:
【付与型】風魔神ガンダーラの風袋
である。
悪魔階級は【特級悪魔(カラピエル)】だ。
それを見やると、フロストも右手の人さし指を顔の前に立て、構える。
右手の人さし指には綺麗な装飾の指輪(リング)が嵌めてあり、
フロストの能力:
【付与型】氷の女王シヴァの指輪
である。
悪魔階級は【特級悪魔(カラピエル)】だ。
お互い、悪魔階級は互角である。
そして、開始の合図も無しに男同士の戦いの火蓋は切って落とされた。
「おぉぉぉぉ、らあぁぁぁぁあ‼︎」
とヤナギが1度拳を引っ込め、もう一度前に突き出す。
ブゥオオオォォォォォォォォオッ
っと、凄まじぃ大気のうねりを上げながらフロストの正面から濃い密度の風の固まりが押し寄せる。
ヤナギから一直線にフロストの元まで大地がえぐれているが魔方陣(ペンタクル)は健在だ。
フロストは、指輪に集中すると前方に分厚い氷の壁を、なるべく風の力を外へ向けるように斜めに作り出す。
(一発目から全力かよ)
と、思いながらぐっと顎に力を入れるのだった。
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