✬死活的問題✬

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「なぁ、学生寮ってここなのか?」

と新入生案内書と書かれたパンフレットを見ながらフロストは、アリアナとルーナに尋ねる。


「みたいだねー」

と、ルーナはさもどうでも良さそうに答えながらアリアナの髪で遊んでいた。


ほら、みてみてツインテールぅ可愛いーいぃ、と言いながら1人でケラケラ笑っていた。

アリアナは、疲れた目をしながら、

「そのはずよ」

と、答えるあたり既に抵抗を試みたが諦める方針に切り替えた後らしい。


とりあえず中に入るか、とまるで即席で建てましたと言わんばかりな外見の簡素なプレハブの中に足を運ぶ。


「やぁや、いらっしゃい新入生諸君、寮だと思って来たらプレハブだった事にびっくりした?ねぇ、びっくりしたよね?え?びっくりしてないの?つまんない死んで」

と早口で、まくしたてながら喋る女性に出迎えられる。


で、ここはなんなんですか?とフロストが女性に言うと、

「そんなにせっかちだと白髪増えて老けちゃうぞ、あ、もう髪の毛真っ白じゃない」

ぎゃははははっと笑いながらテーブルをバシバシ叩いていた。


ひーひー言いながら「ごめんご」と謝り、ぺろっと舌を出すと、

「それじゃ説明するねー」

と言いながら簡易型人名録(ミニヒューマル)をペラペラとめくりだす。

あったあったと言いながら、簡易型人名録(ミニヒューマル)をめくる手を止める。

わおっ3人ともドラゴンだ、とつぶやき顔を上げると説明を始めた。


「まず、新入生には必ずクラスと、生活する寮を与えられます。」

「魔術学校には、3クラスあり、上からスザク、ビャッコ、ゲンブと分かれています。」

「ですが今年から魔法省より伝達があり特設クラスが設けられました。その新しいクラスがドラゴンです。」

「寮は三つしかないので新しくドラゴン寮が作られる予定だったのですが、残念ながら予算の問題で無理でした。」

「とはいえ、超有名な3人の魔術師から融資して頂いたので他の寮より小さいですが」

と、一拍置いて

「ドラゴン寮ありまぁす。」

ご視聴ありがとうございました。

と軽くお辞儀をすませると、ではこちらです。

と言いながら、早速寮の場所まで案内される。

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魔術学校設立時に当時の学校長と魔法省により

クラス制度が作られる。

能力に応じてのクラス分けであり、各々(おのおの)のレベルにあった学業をとの事だ。

【ゲンブ】魔術の基盤をしっかり積み立てのし上がれ

【ビャッコ】魔術の応用を学び駆け上がれ

【スザク】魔術を身体の一部とし羽ばたけ

そして、本年度より新しく設立されたクラス

【ドラゴン】己の意思の赴くままに高みを目指せ


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「わぁ立派なお家ですね」

とはアリアナだ。

一階は、談話室とカウンターキッチンがあり、

二階には、男部屋各1人づつと奥に大浴場となっている。

3階には、女性の部屋各1人づつと視聴覚室があるので大画面で迫力満点なTVや映画が楽しめるそうだ。

ちなみに寮母さんはいないので各々が各自で力を合わせて掃除や料理して下さいねと、案内をしていた女性は言って、

では、ばいなら〜と女性はプレハブの方へ去っていった。


一階の談話室には各々(おのおの)の荷物が無造作に置かれていた。


とりあえず今日1日は荷ほどきに追われる事になるだろうとフロスト達は思い、荷物整理を始めようと手をつけると、すぐに入り口が開き、

「またまた、私登場でーす」

と、先程の女性が現れ、その後ろに、

頭にちょこんと黒髪の団子を乗っけている女性とサングラスの男が立っていた。


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皆、荷物の荷ほどきを終え、ある程度落ち着いたので談話室でそれぞれ自己紹介を行っていた。

長方形のテーブルを囲むように5人が座っている。

とはいえヤナギは、女性への免疫が少ない訳で1人誕生日席ではあるが。



「成る程、今この場にいるのが黄金の世代ってぇ訳だ」

と、ヤナギが言うとコーラに口をつける。


「じゃぁいずれこの中で首席争いしなきゃならないわね」

ふふふっと笑いながらアリアナが言うと

「えールンちゃん争いは嫌いだよぉ次席でいいよぉ」

と、ルーナはアリアナの右腕に抱きつき、やだやだぁーと言っている。

「次席は狙ってるのかよ」

と、笑いながらフロストが言うと、

「受けて立つばい」

とレゾナが、これまた笑いながら言う

「安心しろ、俺がどーせ首席なんだから」

とヤナギは席を立ち言っていたが誰にも相手にされていなかった。


時刻は既に午後9時を上回っていた。


「ちょっと1人でコーラ飲みすぎだぞ」

と、プンスカッと言った具合でいちいちぶりっ子を欠かさないルーナがヤナギに言う。


「あ、後で買ってきます」

と若干うつむきがちにヤナギが答えているのを尻目に、

「ところでこの中に料理得意な人っている?」

と、今後の食生活についての死活的問題をフロストが問うが、

「「「「……………。」」」」

だよねとフロストは納得し、

「今日は外食にしよっか」

と、言って皆そそくさと外出する準備を始めたのだった。


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