✬その笑顔プライスレス✬
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「早速噂の黄金世代が問題起こしたんだって?」
まだ入学前だぞ、と帝都のギルドでは昼の騒動の話題でもちきりだ。
「直ぐ近くで見てた酒場店の親父の話しじゃあの規模の魔術扱う奴なんて世界中で100人にも満たないってよ」
とゲラゲラ笑いながら男は喋っていた。
それで、
「黄金世代のどいつだよ」
と、先程喋っていた男とは別の男が尋ねる。
なんでも、と前置きし
「黄金世代が3人もその場にいたって話だ」
と、買ったばかりのおもちゃにワクワクしている様な表情で男は喋る。
「氷の隻眼魔術師に荒ぶる雷少女それと自称みんなのアイドルがそれぞれ魔術ぶっ放したって話だ」
「繁華街の一角は氷に覆われて、さらに落雷によって地面がえぐれて、空気の振動で建物半壊って聞いたぜ」
と、楽しそうに語っていた。
噂に尾ひれがつきすぎであるが、彼らにとって別に面白い話しならなんだって良いらしい。
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「良いですか‼︎まだ、貴方達は入学していないのですから責任は各々の師匠にとってもらわないといけないのですよ‼︎」
ですから、迷惑かけない様に気をつけなさい‼︎と、怒っている女性は魔術学校の教員である。
ソファーに座り紅茶を啜ると、
「ただ、入学してから問題を起こした場合は自己責任ですから建物壊したりしたら弁償していただきますからね‼︎」
とプリプリ怒っているが、ソーサーごと持ちあげたティーカップはカタカタカタカタッと小刻みに音を立てていた。
それを見て、(かなり怒ってるなぁ)
とフロストは思っていたのだが、
実はこの教員、ただ動揺を隠しきれていないだけである。
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「それにしてもすっごいわね、貴方の魔術」
練度が違うわ、とアリアナは現在パスタを突(つつ)いているフロストの、手に持っている《氷でできた》スプーンとフォークを眺めながらいった。
魔術学校教員の女性に散々絞られた後、黄金世代の3人はなぜか一緒に昼食を取る事となり帝都中央街の喫茶店に来ていた。
「それはどうも」
と、そっけない返事をフロストは返し、そう言えば自己紹介まだだったね。と、自己紹介を始めた。
「フロスト=マスカーティだ。よろしくね」
と言うと、ルーナとアリアナは一種固まる。
「やっぱりフロストっちは、あのピエロ=マスカーティ様のお弟子様なの?」
と、口をわなわなさせながらルーナは言う。
「お弟子様ってなんだよ」
と笑いながら、
「そんな事より二人も自己紹介してよ」
今年の新入生なんでしょ?とフロストは言いながらパスタを口に運ぶ。
「そうね、じゃぁ先に私から」
と、アリアナは一拍置いて、
「私は、アリアナ、アリアナ=アミエーラよ」
「私はルンちゃんだよ〜」
と、直ぐにルーナも答えるがアリアナにスパンッと軽く頭を叩かれる。
なんて、スピードだ。
「ちゃんと名前言いなさいよ」
と、アリアナに言われ渋々と言った様子で、
「ルーナ=デンキンスです」
と、言いながら頬を膨らませる。
「それよりも、まさか黄金世代って言われる私たちが入学前に出会うなんて面白いわよね」
と、アリアナは笑いながら言う。
ん?何それ?と、フロストは首をかしげると
「え?フロストっちは魔術新聞(リードル)読んでないの」
とルーナは言った。
「全然読んでないよ、魔術研究でそれどころじゃなかったし」
と、フロストはあっけらかんと言った。
「貴方、えっと、フロストも含めて私達3人と後、2人合わせて黄金世代って言われてるの」
ちなみに私は【荒ぶる雷少女】なんて言われてるのよ、とアリアナは異名にあまり納得していない様子だ。
「ルンちゃんは【みんなのアイドル】だぉっ」
と、両手の人さし指を両頬に添えて、ぶりっ子ポーズしてるルーナに
「自称でしょ‼︎」
とアリアナは付け足す。
「なるほどね、2人は漫才でも目指してるんだ」
楽しそうだね、とフロストは適当な返事をすませるが、
「ルンちゃんはアイドルなの‼︎超一流のアイドルを目指してるの‼︎」
と、何しにこの帝都に来たのかよく分からない事を叫んでいた。
アリアナも、抗議しようと口を開くが
「まぁ、そんな事より僕はなんて書かれてたの?」
と、フロストはアリアナに尋ねる。
「【氷の隻眼魔術師】よ、そのままね」
良かったわね、とブツクサ文句を言っている。
何かお気に召さないらしい。
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「やけん、これ高かろぅもんって言っとるとよ‼︎」
現在、店に並んだ商品の一つを手に取り料金を安くしろと抗議している女性が繁華街の南端にあるジュエリーショップにいた。
「やいやい、毎度の事ながらこの店の商品はどれも高いんですぜマスカレード嬢ちゃん」
と、ショップのオーナーは未だに、ぐぬぬぬっと一歩も譲ろうとしない女性に言う。
ジュエリーショップの商品は全て女性用で、お客さんも女性しかいないのだが、このお店のオーナーはとても大柄でガタイが良く、顔は強面(こわもて)であるが、
なんといっても、帝都一の人気ジュエリーショップであるのだから、人は見かけによらない物だ。
オーナーは、ハァと一度ため息をつくと、
「分かった。38万ベルな、これ以上は下げんぞマスカレード嬢ちゃん」
と、女性に言うと、今までうつむいていた女性は勢いよく顔をあげ、まるで待ってましたと言わんばかりに
「ありがとっおじちゃん、本当(ほんと)好(す)いちょうよ❤︎」
ふふっと、可愛らしい満面の笑みでいった。
オーナーは、再度ため息をつくとその笑顔にはプライスレスだな、と訳の分からない事を考えながら、この女性の師匠イデアを思い出し、流石イデアの弟子だと納得する。
そう、この満面の可愛らしい笑みで笑う女性こそ、ここ、帝都マジョリカの最高責任者であり学校長のイデア=マスカレードの弟子、
【帝都が生んだ麒麟児】レゾナ=マスカレードである。
男を落とす術(すべ)は、イデアからしっかり受け継いでいるようだ。
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