✬黄金世代と騒動✬

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ここ、【シュテラ】では雪が10㌢も積もりあたり一面綺麗な銀世界となっていた。

年中お祭り気分のシュテラでも、ぼんぼりや提灯によってライトアップされた街は、普段とは打って変わって、その街並みを一層引き立たせている。

今は丑月(うしづき)、一年間の初めの月だ。


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「えっ、もう帝都に」

向かうのですか?とフロストはピエロに尋ねる。

ピエロは、そうばい、と答えると、

「魔術学校に入学する生徒は3ヶ月前から寮に入るっちゃん」

それに、とつづけて

「いろいろ教科書とか帝都で揃えんないけんのやけん」

と言いながら朝食のブロッコリーを口に運ぶ。

「それよりも、コレあげる」

と、包みをフロストに手渡す。

なんですか?と尋ねながら受け取ると、フロストは包みを開け、なかを確認した。

「サイズちょうどよかろ?」

入学祝いばい。と付け加えパンを齧っていた。

「グローブ型の魔道具ですか、しかも」

まだ中身空っぽですね。と、答える。

まだ内蔵悪魔がいない事は【真実の眼】で確認した。

「まぁ、学園の制服規定にもグローブは入ってるから安もんよりよかろぉもん」

と、ピエロはケラケラ笑っていた。


確かに、グローブに施されている魔方陣(ペンタクル)の装飾は見事なもんだ。

この、六角形魔方陣(ペンタクル)なら【イフリート級】まで耐えれるだろう。


「帝都までは、ミリヤがついていくから魔導書(マジックブック)とかローブを買う場所はミリヤに聞いときね」

と、ピエロが既にミリヤに場所を教えていると言う。


「まぁ、勉強も大事ばってん、しっかり友達作らなばい」

中には、一生の友達になるかもしれん人もおるんやけん、と甲斐甲斐しく付け加えていった。


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「これで、全部よね?フロスト様」

と、ミリヤがこれで必要な物は全てか?とフロストに尋ねる。

「うん、ありがとうございます」

と、答えると

「では、私はシュテラに戻りますので」

と答え、最後に、頑張りいねと小さく声に出して言うと直ぐにその場を離れ去っていく。


最近ミリヤが、フロストに対して少し優しくなったなとは思うが、調子にのるとミリヤの顔と言動が怖いので気をつけている。


とりあえず学校の寮に向かうとしよう。

と、フロストは学校のある方面へと歩いていく。


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ところ変わり、ここは帝都繁華街。


「これ、頼まれていたた魔導式マイクなんだけど」

本当にこんなのでいいわけ?と、女性は向かい側にいるゴスロリファッションの女性に尋ねる。

「全然、完璧、嬉しすぎてルンちゃんハァハァしちゃう」

と、自らをルンと呼ぶこのゴスロリファッションの女性こそ、今年の入学者であり黄金世代の一人

【自称みんなのアイドル】ルーナ=デンキンス

である。

そして向かい側の女性も、今話題の黄金世代の一人

「まぁ、あなたの魔術の使い方は噂で聞いているから今更疑っていないのだけれどね」

と、ルーナに自ら製成した魔導式マイクを手渡したのは、

【荒ぶる雷少女】こと、アリアナ=アミエーラ

である。

「それより、なんかむこう騒がしいわね」

と、アリアナは騒ぎのおこっている方を指差しいった。


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「おいおい、何事だよ」

とは、魔蔵書店のオーナーだ。

ここは帝都、繁華街の一角。

「なんでも今年の新入生同士が喧嘩してるみたいだぜ」

と、ご近所の酒場店の親父が言う。

喧嘩なんて、毎年恒例、強いて言えば日常茶飯事ではあるがせめて場所変えて欲しいものだ。

止めるか?と酒場店の親父は言うが、

「ガキの喧嘩だ、暖かく見守ろうぜ」

それに、たかたがこの程度の喧嘩だ。

止めるまでもないよ。

と、言っていた矢先


パキパキパキパキパキパキッピキィィィィィィイン‼︎


と、繁華街の通路一帯が氷で覆われ、喧嘩をしていた少年二人だけ見事に氷像とかしていた。


魔蔵書のオーナーと酒場の親父は、口をあんぐりと開けて、今しがたおきた事に戸惑いを隠せない。

この規模を一瞬で凍らせるとは、どんな奴だと視線をはるか北側の通路に立つ少年へと向ける。

誰だあいつは?とは誰がいったか、近くの店先にいた人や他のお店から一部始終を見ていた人もガヤガヤと喋り出す。

少年は、さも当たり前のような足取りでこちらへ向かって歩いて来ていたのだが、急に少年は足を止めるとおもむろに右手の人さし指を空に向けた、

その瞬間、


ジジジジジッズドオォォォォォォォォォォオン‼︎


と、晴天(せいてん)の青空のもと、落雷(らくらい)が空気を震わせけたましい雷鳴(らいめい)と共に降り注ぐ。


思わず皆、耳をふさぐが直ぐに顔をあげ、雷が落ちた場所をみやる。


「うーわっびっくりした」

と、さも驚きましたと言わんばかりに少年は言うが、その顔は至って普通の表情である。

「今日の天気予報に落雷なんてあったっけ」

と、能天気な事を言いながら先程一帯を凍らせた少年が今度は氷で出来た傘を手に持っていた。

少年の周りは、アスファルトがえぐれ、黒ずみ、もうもうと白い煙が立ち込めていた。

そう、この少年はフロストである。


立て続け様におこった出来事に、住人は戸惑いを隠せない。


ここは、帝都マジョリカ

つまり、ここに住む住人はほとんど魔術師であり当然学校を卒業しているのだから魔術なんて見慣れた物である。


だが、この規模の魔術の行使は一流魔術師同士の戦争以外で早々おこらない事態である。


「ちょっと‼︎あなたでしょ‼︎ここら辺一帯を凍らせたの‼︎」

と、フロストに向かって足早に歩いて来る女性は、なんて事してるのよと言いながら酷くお怒りの様子らしい。


「ちょっとアリアナちゃんまってよぉ〜」

と言いながら、アリアナを追いかけるのはルーナだ。


フロストは傘を畳むと、トントン、と軽く地面に当てた。

すると、氷の魔術で生み出した傘は白い靄(もや)となって消える。


フロストの元に辿り着いたアリアナは、

「あなたバカですの?いくら入学式が間近に迫ってて浮かれていたとしてもこんな事しちゃいけないでしょう」

そりゃ私も少し浮かれてはいるけれど、とアリアナはフロストに言う。

「アリアナちゃん可愛い〜浮かれてたんだぁ」

と、後ろでルーナが両手を胸の前で合わせてクネクネしていた。

「いや、そんなんじゃなくてあそこで喧嘩してた人がいたから止めただけなんだけど?」

と、フロストは凍らせた二人の少年を指差して言う。

え?っとアリアナもつられてそちらを見やると確かに綺麗な氷像が、つい先程まで喧嘩していた摑み合いの体制のまま凍らされていた。

「てっきりオブジェかと思っていたわ。芸術的ね」

と、場違いな感想を述べる。

「あれ早く魔術解除しないとあの二人死んじゃうから通してくれる?」

とフロストは言う。

「それならルンちゃんに任せなさい」

と、ルーナは素早く背中のマイクスタンドと腰のマイクを手に取ると、マイクスタンドにスチャッとマイクを装着する。

え?っとフロストは訳が分からずアリアナは、

「あ、ちょっ、ダメよルーナ」

と止めようとするが、


ビリビリビリビリビリビリッ


と空気が振動しだす。


通路一帯の雪が割れ、二人を覆っていた氷にもヒビが入り、近くのお店の外装もヒビが入り割れていた。


「なるほど、振動か」

と、冷静に分析するフロストの横で、

耳を抑えながらルーナにやめるように言うアリアナの姿がそこにあった。


そこへ魔術学校の教員が現れ、騒ぎが収まるのはそれから1時間後の事だった。


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