✬5人の天才✬

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早いところでは、雪が降り始め

ここ、帝都【マジョリカ】では既に雪が5㌢も積もっていた。

今は、亥月(いつき)である。

来月、末(まつ)には新年の終わりと、そして新しい年の始めがやって来る。


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「こんな所にいましたか、今朝の魔術新聞(リードル)はお読みで?」

と、頭に鍔(つば)の長い帽子をかぶった魔術師は、ソファーに腰掛け紅茶を啜る女性に声をかける。


場所は帝都【マジョリカ】にあるギルドだ。


女性は、声をかけてきた魔術師の男の長い鍔(つば)の帽子に目を向け、

長い鍔(つば)に、軽く積もっていた雪が水滴へと変わっていくさまを見ながら

「えぇ、見ましたわMr.ブルフ」

と答える。

Mr.ブルフと呼ばれた男は、フンッと鼻を鳴らすと、もっと驚くかと思ったのだがね、と言いながら近くのウェイトレスにコーヒーを注文する。

まさか、と顔をしかめて女性は

「驚いていないように見えるのかしら?」

これでも動揺を隠すように、いつもは絶対に飲まない、大嫌いな紅茶を飲んでいるのよ?

と、Mr.ブルフにはまったく理解出来ない事を女性は言っていた。

いや、訂正しよう。

この女性以外にはまったく理解出来ない事を言っていた。


ウェイトレスがトレイにコーヒーを乗せやって来ると、既に女性の向かい側に座るMr.ブルフの前に、

「お待たせしました」

と言ってコーヒーを置き、他のテーブルへオーダーを取りに去っていく。


Mr.ブルフはコーヒーを啜ると

「来年の魔術学校は荒れまくりますなぁ、私ら教員も気持ち引き締めとかないと」

いけませんなぁMs.バレンティーン、と向かい側のソファーに腰掛ける女性に問いかける。

「えぇ、まったくですわね」

と、澄ました顔でMs.バレンティーンは答えたのだか、左手でソーサーごと持ち上げたティーカップは、カタカタカタカタッと音を立てていた。


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来年度の、魔術学校入学者の中の有名どころが魔術新聞(リードル)に大々的に取り上げられていた。

紙面の最初の見出しはこうだ。

【帝都魔術学校黄金世代確定‼︎】

と綴られ、その横に

《5人の天才が一堂に会す》

と書かれていた。


その下の行には5人それぞれの異名が書かれていた。

《荒ぶる雷少女》

《神速の風来坊》

《氷の隻眼魔術師》

《帝都が生んだ麒麟児》

《自称みんなのアイドル》

と。


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場所は変わって、ここは王都【スーラン】


「まったく、なんなんじゃ‼︎この魔術新聞(リードル)の見出しは‼︎」

と、魔術新聞(リードル)を机に叩きつけているのは、王都魔術学校の校長である。

顎には立派に髭を蓄えており、

ふくよかな…

デブである。


えぇい‼︎と言い近くにいる男を指差し魔術新聞社に抗議しろ‼︎と言っていた。


指差された男は、おほんっと咳払いすると

「王都魔術学校にも才ある優秀な生徒がいるのですから」

魔術新聞社に、来年度の入学者が載っている

簡易型人名録(ミニヒューマル)を渡せばよろしいのでは?と言うと

それもそうか、と校長は早速、魔術新聞者宛に手紙を書き出す。


数日後、魔術新聞社より返信があり

誠に申し訳ありませんが…

と、最初の文に目を通した瞬間に破り捨てる王都魔術学校校長の姿がそこにあった。


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